土肥: 久世福商店の店内に入ると、「地方で売っていそうだなあ」「なんだか懐かしいなあ」といった印象を受けるんですよね。でも、地方に行っても同じような商品を手にすることは難しいし、子どものころに同じような商品を買った記憶がない。2013年に1号店をオープンして、その後店舗数が急増していますが、そもそもどういったきっかけでこのような業態の店を始めようと思ったのでしょうか?
山田: 当社はジャムやワインなどを販売している「サンクゼール」という店舗を運営していまして、海外進出を考えていました。10年ほど前からそのように考えていて、中国に行ったり、香港に行ったり、台湾に行ったりして、「どこかいいところはないかなあ」と探していました。上海の近くに寧波市(ねいはし)というところがあって、そこで会社を構えることに。
その後、上海に「サンクゼール」の直営店を構えたところ、現地の人からこのように言われました。「なぜ日本企業なのに日本酒を扱わないの?」「なぜ醤油を扱わないの?」と。香港やシンガポールの展示会に出展したときにも、同じようなことを言われたんです。「なぜ『和』の商品を販売しないの?」と。
当時、現地で売っていた日本に関する商品は「ちょっと……」と感じるモノが多かったんですよね。「本物」と呼べるようなモノがなかったので、なんとなく「和」で勝負したほうがいいのではないかと考えていました。
土肥: 具体的に動いたのでしょうか?
山田: いえ、新業態の構想は手つかずのまま。しばらくすると尖閣問題によって反日運動が起きました。また、原発事故によって日本から商品を輸出することができなくなりました。お店はあるのに、モノがない。仕方がないので、中国から撤退することに。その後、イオンさんから「幕張新都心にショッピングセンターを構えるので、新しい業態を考えてくれないか」という話をいただきました。
中国で漠然と「日本の商品」を扱う店を考えていたので、「和」をコンセプトにした店はどうかといったアイデアが浮かびました。日本でそのような店を構えて、その後、海外に出るのはどうか。ショッピングセンターの近くには幕張メッセがあって、そこで定期的に食品展示会などを行っている。海外の人が視察に来られたときに、ひょっとしたら「一緒にやろう」といった声がかかるかもしれない。ということで、「和」をテーマにした店を運営することに。
土肥: それはいつごろの話でしょうか?
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