仕事で使える知識などを習得するために、今でも本を読むというビジネスパーソンは多いだろう。しかし、本を1冊読み終えるのにそれなりの時間を要してしまうのは言うまでもない。
もっとたくさんの本を読みたいけれど、なかなか時間が取れない――。そんなビジネスパーソンの悩みを解消できるとして人気なのが「flier(フライヤー)」という書籍要約サービスだ。
2013年10月のサービス開始後、しばらくはじわりとユーザー数を伸ばしていたが、15年12月にiOSのネイティブアプリをリリースし、さまざまなメディアでも取り上げられたことで、ユーザー数が急増。18年4月時点で19万人を突破した。法人会員に加えて、月額2000円(税別)で全1300冊以上の要約が読み放題になる有料サービスを使う個人会員も少なくない。
ここまでユーザーを引き付ける理由は何だろうか。flierのコンセプトは、どんな本でも「1冊あたり10分で読める要約」。単に要約文だけでなく、最初に本の要点も記すなど、ビジネスパーソンが通勤時や仕事の休憩といったスキマ時間に読めるようなコンテンツ作りを心掛けている。加えて、毎日1冊ずつ新しい本の要約が配信されるという更新頻度の高さもユーザーを飽きさせない仕掛けと言えるだろう。
短時間でより多くの本に触れたいというビジネスパーソンの要望を形にしたflierだが、元々は開発メンバーの「自分たちがこんなサービスが欲しかった」というところから生まれた。
運営会社のフライヤーを創業した大賀康史CEOや苅田明史COOはコンサルタント出身。当時、同じ会社で働いていた2人は、仕事が忙しくてビジネス書などを読む時間がないという課題があった。「本の内容が要約されたサービスがあったら便利なのにと思っていました。スキマ時間で読みたいので、スマートフォンで見やすい形で。そのうちに、今理想のサービスがないならば自分たちで作ろうと起業しました」と大賀CEOは振り返る。
会社を立ち上げた当初は自分たちでも要約記事を書いていたそうだ。しかし、とにかく手間暇がかかるので、徐々にライターにその仕事を任せていくわけだが、しっかりとした要約文を書くのは並大抵のことではない。「要約するには当然、本の内容をきちんと理解する読解力に加えて、例えば、ビジネス理論などの専門性も求められます。さらには分かりやすく書く技術も必要です」と大賀CEOは説明する。そのようなスキルを持ったライターを発掘、育成するのに苦労したという。
今では数々のヒット作を手掛けた書き手や出版社編集者、新聞記者など優れたライターを抱えて運営に当たれるようになった。ただし、創業当時から変わらないのはコンテンツ作りにかける手間だという。
まず本を選定し、それを出版社に確認する。要約OKとなれば、ライターが記事を書き、それを別のスタッフが読んで内容をダブルチェック、あるいはトリプルチェックする。その上で出版社の担当者や著者がチェックし、最終的な修正を加えて公開するといった流れだ。
「何重ものチェック体制ができています。ここまで手間をかけてコンテンツの質を高めているサービスはほかにはありません」と大賀CEOは胸を張る。
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