このような「新しい戦後教育」を受けた子どもたちが社会人となった時代、日本には「みんな」のための脇目もふらず働き、帰宅するのは週1回という「モーレツ社員」や「企業戦士」があふれかえった。そして80年代になると、その反動のように過労死や社内いじめ、自殺が徐々に顕在化していく。
この2つの間になにかしらの因果関係があるのは、集団主義教育が始まった直後の副作用ともいうべき問題を見ても分かる。集団主義教育の「実験校」とされた江戸川区の小学校で、「きびしい励まし合いのなかで脱落する子がでた」(読売新聞 1963年7月1日)というのだ。
いくらいっても遅刻癖の直らない問題児を、班長がサジを投げた。グループの統率がとれないと責任を問われてしまう他の班長も面倒はごめんだとその問題児の受け入れを拒否。結局、「この子が休んだ日、学級全体会議で“追放”ときまってしまった」(同紙)という。
「みんな」に貢献することのない「お荷物社員」を各部署で押し付けあった後、「追い出し部屋」のようなところへ送り込んで追放させる日本企業の陰湿なカルチャーの片鱗が見えないか。
いずれにせよ、我々日本人はこのような「集団主義教育」を50年間続けていた。ちょうど第一世代がいまの60代で、現在さまざまな組織でリーダー的な立場についている。「みんなのために反則しろ」と言わんばかりの指示をした、日大アメリカンフットボール部の内田正人前監督などはまさにその世代だ。
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