村上次長によれば、倉庫という業態に求められる機能も変化しているという。
「倉庫にとって、かつては『保管』というのが主要な機能でした。しかし現在は、保管はあくまで補助的な機能です。より販売現場のバックヤードに近いような仕事、例えばアパレル企業では、服の小分けや値付け、畳みなど、製品を商品化するための作業である『流通加工』を倉庫でやるのが当たり前になってきています。主婦層の中には、こういう仕事を得意とする人も多いのです」
また、研究開発の現場と倉庫機能の現場がより近くなっているという事情もある。前出の村上次長はいう。
「アパレル企業などでは、倉庫内に顧客対応のためのコールセンターを設置する例も多くなってきています。倉庫には多くの在庫があるので、顧客からいわゆる『クレーム』を受けた際も商品の交換対応などが簡単にできるからです。
ただその際に、従業員が単にクレームなどに対応するだけでなく、倉庫内の在庫で現物を確認し、『お客様から商品のこの部分をもっと改善すべきだという声があった』というような改善点を、自社の研究開発の部署にフィードバックすることができるのです。このように顧客の視点をすぐに反映できるのが在庫を抱える倉庫の強みであり、だからこそ消費者の感覚に近い主婦の働き手を必要としているのです」
物流施設の役割の変化も、ママ従業員の獲得に注力する要因になっているようだ。
「ここなら子どもが病気になった時も、職場からすぐに迎えに行けるので安心して働けます」。丸紅ロジスティクスで事務職として働く中澤久瑠美さん(24歳)は喜ぶ。出産前は病院の事務職や携帯電話販売会社の受付などで正社員として働いていた。出産を機に退職し、育児を始めた。その後、働きたいと思い、仕事を探してみたものの、保育施設の保育料はとても高かったという。
「(保育料は)平均約5万円程度ととても高かったのです。頑張って働いて稼いだ分が、丸々保育料に消えてしまう。託児所だと子どもを預けた分だけの保育料で済むので、託児所を中心に探しました。でも、託児所を備えている職場はほとんどが介護施設や病院で、私のやりたい仕事とは違いました。ママスクエアさんであれば、一般の保育所に預けるよりも、だいぶ金銭的に楽になって助かりました」(中澤さん)
職場と託児所が離れていると、子どもの送迎と職場への移動が別々になり、二度手間となってしまうが、「ここなら、朝もゆとりをもって生活できる」(中澤さん)という。
女性のライフスタイルが多様化する中で、従来の保育所の枠組みだけでは女性が子どもを育てながら働くのは難しくなっている。働くママにとっては職場と保育施設が一体となることでブランクを空けずに働くことができ、生活の選択肢だけでなくキャリアの選択肢も広がるのだ。
実際、キッズスペースを設けた効果は大きく、丸紅ロジスティクスが庫内作業を行う10人のパート従業員を募集したところ、100人の応募があったという。
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