ZOZO前澤社長の球界参入に「NO」を突きつける人が多い背景赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)

» 2018年07月19日 11時15分 公開
[臼北信行ITmedia]

前澤社長の球界参入発言に疑問の声

 マリーンズはプレーオフから勝ち上がっての日本一から8年、リーグ優勝に至ってはもう13年も縁のない苦しい状況が続いている。熱心なファンの鬱憤(うっせき)が日を追うごとにたまっているのも当然の話で、このまま沈みかけている船に乗り続けるのではなく、それならば潤沢な資金を持つ前澤体制にかじを切ったほうが懸命と周囲はニラんでいるようだ。

 マリーンズファンの間で前澤社長は弱いチームを救ってくれる「救世主」もとい、ここまで何かと封建的になっている日本球界に風穴を開ける「開拓者」としてファンの間では大きく期待されているようである。

 ところが取材を進めてみると、プロ野球界に携わる有識者のほとんどが前澤社長の球界参入発言に懐疑的な目を向けていることが分かってきた。ある日本野球機構(NPB)の関係者は「そもそも先にSNSで発言すること自体、見識を疑う」と憤った上で、次のように続けた。

 「仮にロッテさんと水面下で球団買収の話が進んでいるのであれば、普通に考えても先にTwitterで意思表示することなどまず有り得ない。誰が見ても明らかなルール違反だ。本拠地のネーミングライツを持つ関係で自分たちとの買収関係が疑われ、露骨に不快感を示しているロッテさんはとにかく今回の一件に激怒している。

 万が一、ロッテさんが今後カネを積まれて“変心”し、球団の身売りに応じたとしても他の11球団オーナーの同意を得ることはほぼない。今回のように周囲を省みず自分の私利私欲だけにかられ、突っ走る姿勢はかつてのホリエモンを連想させるからだ」

 思えば、前出の堀江氏も球界再編の際に既存の球団オーナーや有識者たちとの意見調整をほとんど行わず、エゴを貫きすぎた反動によって球団保有の夢を潰されてしまった。そういう意味では現段階において前澤社長のやり方はかつての堀江氏と酷似していると言えよう。悪く言えば、日本のプロ野球界は極めて古い体質であり、あえてどこの球団とは言わないまでも“昭和の妖怪”と呼ばれるような実力者たちが幅を利かせている現状がある。

 それだけに、この本流へ新たに加わりたいのであればおのずと「ロビー活動」が必要となるが、本来なら機密事項とも言える自分の本音を真っ先にSNSで発信してしまう姿勢から想像すると、とてもそれを遂行しているとは思えない。

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