アイコス用たばこはどう作っている? スイスの工場と研究所に行ってきた新型デバイス登場でシェア拡大なるか(3/6 ページ)

» 2018年10月23日 11時30分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

専用の器具で加工

 成型されたシートはその後、専用の器具によって加工され、カーテンのようにひだのある波型になる。PMIの担当者は「加熱した際に出るエアロゾル(蒸気)に香りの強さや吸い応えを持たせ、オリジナルの風味を担保するためだ」と波型に加工する理由を説明する。

photo 工場内で加工されるタバコ葉シート(提供:PMI、スイス・ヌーシャテルの工場内部とは異なります)

 波型に加工されたシートは、機械によって丸められ、長さ12ミリ(2本分相当)程度の円筒形に加工される。だが、この円筒は、まだ加熱しても吸うことはできない。

photo 実際のヒートスティック。波型に加工されたシートが折り重なっている(筆者撮影)

密度を下げることが重要

 そこで次の工程では、円筒の両端に、2種類の特殊な包み紙を取り付けて内部に空洞を作り出し、吸った際に最適な空気の通りを実現する。包み紙の1種はトウモロコシ由来の繊維を利用しているため、加熱した場合でも安全という。

 「ヒートスティック内部の密度が高すぎると、加熱した際にエアロゾルが多量に発生し、特有の味わいを生み出せなくなる。そのため、内部の密度を下げることが品質を保つ上で重要だ」(PMIの担当者)

 紙巻きたばこと同様、吸い口にはフィルターも取り付ける。フィルターは、エアロゾルをろ過して味をまろやかにする働きを果たす。

photo ヒートスティック内の包み紙。空洞が作られていることが分かる(筆者撮影)

1分間に8000本が作られる

 こうして、加熱して吸うとおいしく味わえるよう調整されたヒートスティックは、中央で裁断され、1本分の長さに整えられる。1分間に製造される量は8000本に上るという。

 工場には、地上約2メートルの位置にレールが設置されており、出来上がったヒートスティックはここを通り、箱詰め用ロボットの元に送られる。ロボットは、ヒートスティック10本ごとに銀紙を被せ、2セット(20本)ごとにまとめて1ケースに詰め、ラッピングし、大量に集荷した上で出荷用ケースに納入する――といった作業を全て自動で担う。

 普段、コンビニなどで手に入るヒートスティックは、こんな経緯で製造され、世に出されるのだ。今回は秘密保持のため取材できなかったが、「Marlboro(マールボロ)」など、PMIが展開する紙巻きたばこもこの工場で製造されている。

photo スイス・ヌーシャテルにあるPMIのたばこ工場(筆者撮影)

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