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» 2018年11月01日 06時30分 公開

小さな段ボール工場が変えた避難所の光景社長の思い(5/6 ページ)

[橋本愛喜,ITmedia]

 「避難所を“食寝分離”で整えると、衛生面、精神的、身体面からも生活状態がぐっと良くなる。食堂に自分の足で『食べに来る』ため、少しの運動にもなるし、他の避難者と顔を合わせることで、互いの体調も管理し合える。食堂で知り合い、励まし合えるのは、避難所ならでは。プライバシー保護も大事ですが、それと同じくらい『顔を出す』『苦楽を共有する』ことも大事なんです」

 北海道地震の際、とある避難所では、フレンチのシェフが腕を振るっていた。普段、炊き出しには手を付けないという水谷氏だが、そのシェフから『食べてみてください』と促され試食してみたところ、その美味しさに思わず笑みがこぼれたという。

 「食事は、避難所生活で唯一といってもいい楽しみですからね。最近の避難所では、毎日違うものがボランティアなどによって現場で作られ、提供されている。工場で大量生産するのもダメではないが、作り手の思いが入っている食べ物を口にすることで、みなぎってくるエネルギーの量も違ってくる気がします」

 辛抱強い日本人。被災地の中にも、一部にはなぜか「ぜい沢は敵だ」という、戦時中のスローガンのような考えを未だに抱く人がいたり、我慢を美徳とする雰囲気が漂ったりすることすらある。被災時の状況によって限界はあるかもしれない。しかし、二次的な健康被害を防ぐためには、避難所でも極力「日常に近い人間的な生活」を送ることが重要となる。被災した身だからという理由で、より良い環境を望むことに後ろめたさを抱く必要は全くないのだ。

 避難所・避難所生活学会では17年、災害が発生した際には、これら「T・K・B(トイレ、キッチン、ベッド)」を避難所へ迅速に導入するべきだとする提言を発表。今後の安全な避難所環境構築のため、一石を投じた。

 「東日本大震災から長い年月が経ち、有事対策意識が希薄になってきたころでしたが、災害が多かった今年こそ、それらを再認識する機会なんじゃないでしょうか。毎度その場限りの避難所を設置するのではなく、その指標や方針を固めていかなければ、無駄な死はなくならない。イチ町工場の人間ではありますが、災害による二次的な健康被害のゼロを目指して、今後も活動していけたらと思っています」

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