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同性愛公表のパナソニック取締役ベイツ氏「LGBTへの差別は日本経済の損失」若者のロールモデルになりたい(2/5 ページ)

» 2018年12月23日 07時00分 公開
[猪瀬聖ITmedia]

企業にとって「人材の損失」に

――企業にとってダイバーシティーや性的マイノリティー社員の人権を尊重することはなぜ重要なのでしょうか。

 一つはコンプライアンスの問題です。欧米では性的マイノリティーへの差別を法律で明確に禁じている国が多く、職場で差別的な取り扱いがあれば即座に法的な問題に発展します。日本企業も、欧米で事業をする場合はそうした法律を守らなければコンプライアンス違反として訴えられます。日本ではLGBTへの差別を明確に禁じた法律はありませんが、企業が差別禁止をポリシーとして明文化しておくことは非常に重要です。

 もう一つは、企業自身の競争力のためです。少子高齢化が猛スピードで進む日本では、労働力不足が大きな問題となっています。企業が優秀な労働力を確保するためには、女性や障害者、性的マイノリティーなど多様な人たちが気持ちよく安心して働ける職場環境を作ることが大切です。

 性的マイノリティーについていえば、自分がLGBTであることを隠して働いている人は大勢います。彼ら彼女らは、自分がLGBTであることを知られたらどうしようと常におびえながら働いています。知られたくないから、同僚と家族の話もできない、個人的な話をあれこれ聞かれるのが嫌だから、一緒に飲みにもいけない。そんなふうにおびえながら働いていれば当然、仕事の生産性は上がりません。もっと働きやすい職場を求めて転職したり、自分で会社を始めたりする人もいます。企業にとっては人材の損失になります。

 逆に、性的マイノリティーの権利や立場を尊重する職場であれば、カミングアウトする人も増えるかもしれませんし、余計な心配をすることなく仕事に集中することができ、生産性も上がります。そのためにも、行動指針を作って差別禁止を徹底することは効果的だと思いますし、そうした指針があれば、若い人たちも「この会社なら入っても大丈夫」と思うでしょう。

phot 左手前は筆者

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