――「高く飛ぶために深くしゃがむ」。こうした梅原さんの“哲学”はどこから生まれたと思いますか。
昔からゲームセンターで格闘ゲームをやっていると意識させられるのが、当時は趣味の世界ですから、ただ勝っていてもあまり面白くなかったんですよね。もしかしたら勝つだけで満足、という人もいるのかもしれないですけど、自分はそれだけだと満足できなくて……。それで、大事なのは何だろうと考えたら、認めさせること。相手にお前のほうが強いとか、お前には適わないというふうに自分を認めさせないと、大した満足が得られなかったんですよね。
ただ勝ちを求めるだけだったら、ゲーム上の仕様の穴や、相手の欠点をとにかく突いて勝つことも可能です。でも、そうやって勝っても相手は白けるだけなんですよね。私は相手の白けた姿を見ても自分が勝ったとは思えませんでした。
昔のゲームセンターで存在感があるとか、みんなが納得する強さというのは、プレイの内容にありました。こうした考え方はゲームセンターでのコミュニケーションから生まれたものなのかもしれませんね。逆に今ではネット対戦が主流で、そういうコミュニケーションが薄れていますから、プレイで倒してさえいればオッケーっていう時代に入りつつもありますが。
――梅原さんはプロゲーマーとして日々勝負の世界に身を置かれています。今、日本では働き方改革が叫ばれていて、注目されているのが「生産性向上」です。厳しい勝負の世界で生きている梅原さんは、仕事の生産性や効率についてはどのようにお考えなのでしょうか。
なるほど……。思い込みをまず捨てるっていうことが大事だと思いますね。先入観が効率を悪くしている原因になっていることも実は多いのです。好みというか、こうあるべきとか、そういう常識みたいなものは一回捨てて、「どうすれば勝てるんだろう」っていうことをシンプルに純粋に考える。
ただ、これもさっき言ったようにどこかで常識が邪魔していたりして、普段はリミッターがかかっています。追い詰められることで、すごく思考がクリアになって、純粋に「勝つためにはどうしたらいいのか」だけを考えられたりするんですよね。だから効率を求めるにはまず「目的は何か」を明確にして、そのために必要じゃないものは一回捨てる。厳しい勝負であればあるほど、そういう作業が重要でしょうね。
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