情報番組を見て、「その通り!」とウンウンうなずいている方も多いかもしれないが、個人的にはこの「偏向」ぶりは、かなり危ういなと感じた。
お昼のワイドショーなので、「女優と付き合う成り上がり社長をスカッと成敗!」という欠席裁判が数字的にも正解というのはよく分かる。が、さすがに話があまりにも一方的すぎて、なんでもかんでも前澤社長とZOZOが悪い、というような「魔女狩り」のようなムードをあおっているからだ。
そもそもビジネス上の取引なので、互いの方針に違いが出れば、別々の道を進むのは当然だ。にもかかわらず、そういう当事者間の「損得」という話を飛び越えて、ZOZOや前澤社長のやることなすことこき下す、というかなり強めのバイアスがかかっている。
例えば、先ほどスタジオ一体で叩いた「暴言」が分かりやすい。
実は前澤社長のあの問いかけは、ちっとも「やっちまった」というものではない。1年半前、アパレル業界を担当する経済産業省生活製品課が公表した「取組方針」というものがある。これを報じた新聞記事を引用しよう。
「原価率を下げて大量生産し、余った在庫をセールで売る――。その悪循環が競争力を損なうと指摘した」「商社などの卸を挟むアパレルの場合、原価率は2割程度と言われている。定価が1万円の場合、原価は2000円という計算だ。百貨店などへの出店にかかる費用、輸送費などの中間コストに加えて、セールで大幅値引きをしても利益を残せる価格に設定されている」(日経MJ 2017年10月2日)
いかがだろう。前澤社長の「最後の投稿」と丸かぶりなのではないか。
先ほどの情報番組をはじめとした多くのメディアは、前澤社長が述べたことを、アパレル業界の商慣習や仁義を無視して、怒りに灯油をぶっかける「失言」として扱っている。
が、実はこれは、前澤社長オリジナルの問題提起ではない。この業界が長く抱え、監督官庁が警告するほど、誰もが知っている構造的な「病」なのだ。
なんでもかんでも前澤社長が悪いという、大きなネガの潮流ができつつある、と申し上げた理由が少しは分かっていただけただろうか。
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