そして、もうお気付きだろうが、これとまったく同じことは「取引先の信頼を裏切った」というZOZOに対する批判にも当てはまる。
ZOZOはけしからんと怒っている人たちが、その理由に挙げているのが、「ZOZOARIGATO」という有料会員を割引するという新サービスである。これによって、アパレル各社は自社サイトから客が取られてしまうので、損をする。また、ブランド価値が低下するなどの不満が持ち上がっているという。
要するに、「安売りするな」が最大の理由だというのだ。だが、決算説明会に登壇した前澤社長が「百貨店やリアルなショッピングモールは優良顧客施策としてカードを持っていると何%オフなど、ほぼすべての商業施設がやっている施策」と述べているように、「安売り」自体はどこでもやっているし、メーカー自身も自社ECでセールをしている。
では、なぜみんなやっているのに、ZOZOの「安売り」だけがダメなのか。専門家はブランド価値や顧客が取られるうんぬんと小難しいことを言っているが、「ZOZOARIGATO」を正しく理解すれば、何が原因かは明らかだ。
一部アパレルがイラっときたのは、これが「根拠のある安売り」だからだ。
実は「ZOZOARIGATO」は、いわゆるバーゲンセール的な「安売り」ではない。割引額の一部を、日本赤十字社やWWFジャパンなどの団体に「寄付」できるほか、自分の好きなアパレルブランドへ「応援」することができるのだ。
「ふーん、目立ちたがり屋の前澤社長っぽいけど、それが何か?」と冷ややかな反応を見せる方も多いかもしれないが、実はこれ、一部のブランドの根幹を揺るがしてしまうほど、画期的かつ、挑発的な取り組みなのだ。
先ほど経産省が指摘したように、アパレル業界は基本的に、ハナから「安売り」を組み込んだビジネスモデルが主流となっている。売れ残ったものをバーゲン時に30%オフにしてようやく利益を得られるので、当初の値付けは「安売り」前提で高く設定される。この「安売り」依存の傾向は近年さらに進行している。
『アパレル会社の健全性を示す指標に、定価販売率がある。従来は70%が目標だったが、コンサルティング会社、カート・サーモン(東京・港)の河合拓マネジメント・ディレクターは「今は4割にも達さない」と指摘する。収益が落ちてもなおアパレルはセールの集客効果に頼り、店舗では値引き分をあらかじめ上乗せする例もある』(日本経済新聞 2017年7月26日)
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