こういうもうけの構造があるアパレルメーカーからすれば、「なぜ3万円の服が急に半額になるんですか?」「こんなに安売りしてもうかるんですか?」という質問は、答えに窮する「タブー」以外の何物でもない。
高い定価のブランド服が次から次へと世に送り出され、次から次へと値引きされていく――。その構造に対して、消費者には何の疑問も抱いてもらいたくないのである。
では、そういうビジネスモデルを長くやってきた人たちの目に、「ZOZOARIGATO」がどんな風に映るのか想像していただきたい。
消費者への影響力抜群のZOZOがこういう「根拠のある安売り」に踏み切れば、消費者は「根拠のない安売り」――つまり、世間一般のセールに対する疑問が生じる。どうせ数カ月で安くなるのなら、なぜ最初から安くしないのか。安くしている理由は何なのか。消費者がアパレルに対して、「安さ」の「見える化」を求めていくかもしれないのである。それはイコール、現在のアパレルのビジネスモデルが根底から覆されることでもあるのだ。
前澤氏はアーティストと月に向かうアートプロジェクトを計画している
「そんなのはお前も妄想だ!」とキレるアパレル関係者の人も多くいらっしゃると思うが、海の向こうを見渡せば、アパレル業界では、これまでブラックボックスとされてきたことが次々と「見える化」されている。
分かりやすいのが、アメリカ西海岸を拠点に、売上高が150〜300億円規模のEverlane(エバーレーン)だ。
このアパレルメーカーは、消費者に商品ごとのコストを項目ごとに公表している。一方で、商社などの中間流通を省いて、工場で直接商品の企画・生産を行い、消費者に届けるといういわゆる「D2C」(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)によって、従来のアパレルメーカーよりもかなり価格を抑えている。
つまり、大量生産で安価さを実現してきたGAPが閉店を余儀なくされて苦戦する一方で、原価というブラックボックスの「見える化」が進んでいるのだ。
このような流れは、米国や中国というネット通販大国では既に起きている。ということは、その流れも遅かれ早かれ、日本にもやって来る。そのとき、「根拠のない安売り」が商習慣としてビタッと定着している日本のアパレル業界はどういう動きをするか。追随する者も出るだろうが、「ムラ社会」特有の反応として、まずはやはり叩くのではないか。ああだこうだと理屈をつけて、「村八分」にするのではないか。
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