土肥: 秋葉原のカプセルホテルを継ぐことになったわけですが、経営状態はどんな感じだったのですか?
油井: それまで決算書を見たことがなかったのですが、5億円の借金に対して、現金は1000万円ほどしかないことが分かってきました。このままの状況が続けば、会社は2〜3カ月しかもたない。従業員に給与を支払うことができなくなって、家賃も払うことができなくなる。会社の経営は、火の車だったんですよね。
エレベーターは男女で分かれている。写真はナインアワーズ竹橋(撮影:ナカサ&パートナーズ)
土肥: 残された時間が少ないなかで、どこから手をつけましたか?
油井: 事業を引き継いだわけですが、カプセルホテルを運営することに興味はなかったんですよね。業界のこともそれほど詳しくなかったので、自分ができることは何かを考えました。投資会社での経験を生かして、財務のことから手をつけることができるのではないか。いや、そこしか手をつけることができませんでした。融資を受けている金融機関に交渉したり、関係者にお願いしたり。
結果、借金の返済計画を見直してもらうことに。“延命”してもらったわけですが、カプセルホテルがもうかっているわけではありません。利用者がものすごく増えて、ものすごく利益を生むことは想像できませんでした。このままでは借金を返すことができない、出口も見えてこない。こうした状況に追い詰められていたので、IT企業を立ち上げて、上場させよう。そして、キャピタルゲイン(株式などを売却することで、得られる利益のこと)を手にして、借金を返済しようと考えました。
ナインアワーズ竹橋(撮影:ナカサ&パートナーズ)
土肥: おー、なんか大胆。で、成功したのですか?
油井: いえ、残念ながら……。オンラインスーパーをできないかと考えていたのですが、うまくいきませんでした。それでも飯を食っていかなければいけないので、とある会社に就職しました。そこで働きながら給料をもらって、カプセルホテルは営業を続けていました。
そんな日々を送っていましたが、会社の債権を私個人が買い取るなどして、借金を10分の1ほどに減らすことができました。5億円が5000万円ほどになったので、この金額であればコツコツと返済できるはず。このとき、カプセルホテルを清算するか、続けていくか悩みました。
結果、後者を選びました。事業を建て直すことはできましたが、もう1つの夢は道半ば。世界で戦っていけるようなカプセルホテルをつくることは、スタートラインすら立っていません。どのようにすれば、カプセルホテルの仕組みを輸出することができるのか。その答えは、やはり自分が見つけ出さなければいけないと考え、事業を継続することにしました。
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