カプセルホテルの“常識”が変わる? 「ナインアワーズ」の考え方水曜インタビュー劇場(眠り公演)(4/7 ページ)

» 2019年02月27日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

自分の考えが伝わらない日々

土肥: 世界で戦っていけるカプセルホテルをつくるんだーと決意したのは、2004年のことですよね。しかし、1号店(京都)がオープンしたのは09年。5年ほどの時間がかかっているわけですが、ちょっと長くないですか?

ナインアワーズ新大阪駅(撮影:ナカサ&パートナーズ)

油井: 事業を根本から見直さなければいけないと思ったので、コンサルタントではなくて、とあるデザイナーさんに仕事をお願いしました。「僕はこんなことをやりたいんだ」といった話をしたのですが、それがうまく伝わりませんでした。いま、振り返ってみると、それは当たり前のこと。僕はデザインのことを何も知らないので、そんな人間があれこれ言っても、プロにはなかなか伝わらないですよね。

 とはいえ、何もしないわけにはいきません。こちらも考えに考えて、できるだけ伝わるように表現したものの、なかなかうまくいきませんでした。結果、先方から出てきたのは「高級カプセルホテル」でした。「世の中にないモノをつくりたい」「誰も見たことがないモノを提供したい」といった形でお願いしたのですが、うまく伝えることができませんでした。

土肥: 世の中にないカプセルホテルをつくってほしい、と言われても、よく分からないですよね。

ナインアワーズ浅草(撮影:ナカサ&パートナーズ)

油井: そんなこんなで、1年ほど時間がたちました。このままではいけないということで、著名なプロダクトデザイナーである柴田文江さんにお願いすることに。こちらはお金がない、土地もない、建物もない、といった状況にもかかわらず、仕事を引き受けていただきました。

 柴田さんにも「世の中にないモノをつくりたい」と話したところ、このように言われました。「油井さんの心の中にあるもの以上のことは、デザインできないんですよ」と。この話を聞いたとき、自分の価値観をゼロからつくり直さなければいけないと痛感しました。「こんなことをやりたい」「あんなこともやりたい」などと伝え、ときにはお叱りの言葉をいただきながら、3年ほどの月日がたちました。

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