カプセルホテルの“常識”が変わる? 「ナインアワーズ」の考え方水曜インタビュー劇場(眠り公演)(5/7 ページ)

» 2019年02月27日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

議論を重ね、娯楽的要素をそぎ落とす

土肥: 長い、長すぎる。素人の意見で申し訳ないのですが、3年ほどの時間を使って、どんな議論を交わしていたのでしょうか?

ナインアワーズ成田空港(撮影:ナカサ&パートナーズ)

油井: さまざまなことを話し合いました。例えば、カプセルホテルって娯楽的な要素がたくさん詰まっていますよね。大浴場があったり、サウナがあったり、休憩スペースがあったり、ご飯を食べるところがあったり、カプセルの中にテレビが付いていたり。こうした既存のモノをそぎ落とした形のカプセルホテルをつくることができないか、といったことも議論しました。

 ほとんどの人は「カプセルホテルには大浴場があって、テレビが付いていて」と思い込んでいますよね。いわば“常識”となっていることに対して、その常識をそぎ落とす。そして、眠るために特化した形の施設をつくろうとしたので、とても恐怖を感じました。

 ただ、怖がってばかりいてはいけません。その恐怖を乗り越えて、新しい事業をつくっていかなければいけない。あれも妥協して、これも妥協してといった感じで中途半端なモノをつくってしまうと、新しいカテゴリーを生み出すことは難しい。きちんと議論して、自分の考えを伝えなければ、また高級カプセルホテルができるかもしれない。ひょっとしたら、オシャレなカプセルホテルができるかもしれない。そうなれば、既存の延長線上の施設になってしまうので、それは絶対に避けなければいけない、という気持ちが強かったですね。

ナインアワーズ成田空港(撮影:ナカサ&パートナーズ)

土肥: 価値観を伝えるのに苦労したわけですね。

油井: 以前のデザイナーさんにお願いしたときは、伝えることが難しいことを痛感しました。また、自分の心の中にどこか安直に考えていた部分があったのかもしれません。「なんとかなるだろう」と。柴田さんにお願いすることによって、自分の心の中にある「考え」を磨いていかなければいけない、ということが分かってきました。繰り返しになりますが、何度も何度も議論を重ね、ようやく事業が完成に近づいたといった感じですね。

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