土肥: 2009年になって、ようやく1号店が京都に誕生したわけですが、当初の反響はどうでしたか?
油井: デザイン業界など、特定の人にはものすごく刺さったのですが、一般の人にはまだまだでして。予約開始日には、「9人」しか申し込みがありませんでした。会社のスタッフとは「ナインアワーズだから、9人かな」と笑っていたのですが、今後のことを考えれば笑ってばかりいられない状況でした。
オープン後も逆風が吹き荒れていたのですが、少しずつ認知が広まっていき、4年後の13年に2号店(成田空港)をオープンすることができました。カプセルホテルの場合、建てようと思ってもすぐにできるわけではありません。土地を見つけて、館内のデザインを決めて、といった作業を考えると、どうしても2年ほどかかるんですよね。2〜3年前に仕込んでいた施設がようやく花を開いたといった感じで、昨年は5店舗をオープンすることができました。
2009年、ナインアワーズの1号店(京都)がオープンした(撮影:ナカサ&パートナーズ)
土肥: カプセルホテル業界を見ると、オシャレだなあと感じるところが増えていますよね。そうしたところを意識しましたか?
油井: 「オシャレな施設をつくる」ことは、私たちにとっては当然のことで、そのことを声高に言うのは「カッコ悪いなあ」と感じているんですよね。メディアなどで「ナインアワーズはオシャレなカプセルホテル」といった形で紹介されることがあるのですが、こちらから「オシャレ」という言葉を発したことはありません。
なぜ「オシャレ」という言葉を使わないかというと、館内をオシャレにしただけでは、人が利用するとは思えないから。「オシャレだから」「カッコいいから」といったことに取り組んでいるようでは、既存の延長線上のモノしかできないと考えています。
カプセルホテルというのは、イメージがあまりよくありません。お酒を飲み過ぎたサラリーマンが家に帰れなくなったので利用している、といったイメージが強いのではないでしょうか。このほかにもマイナスなことばかりが浮かんできますが、それを隠すような形で「オシャレさ」や「カッコよさ」でラッピングしても、世の中にはなかなか伝わりにくいのではないかと。おいしくないリンゴを、おいしく見せているだけのような感じがして。
ナインアワーズの創業者、油井啓祐さん
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