数日後の社長室。小田社長、日野下、竹中で率直にプロジェクトの状況を話し合う会議が設定されていた。キックオフ開催後、すでに5回ほど行われていた。
小田: そうか、課長とリーダーはそこまで積極的になってくれているか。検討して答えを持ってこいというスタンスではなく、経営企画とコンサルタントが現場と一体になって議論してくれた成果が出ているな。
日野下: はい。最初は不信感もなくはなかったのですが、今はこの際全部提案しますよ、という感じになっています。
竹中: 部長さんたちが変わりましたね。「部門を守る、変えたくない」というところから、課長・リーダーにいい意味で突き上げられて、その気になっています。ステコミで部長自身が発表して、社長と討議した経験も大きかったです。
小田: 日本の企業はミドルが「燃える集団」になると力を発揮できるからな。私が今回一番成し遂げたかったのはまさにこれなんだ。
竹中: 大切なのは、燃える集団を維持することです。そのためには、横断テーマ、全社テーマにスピード感をもって対処し、「提案すれば変わっていく」確信を醸成することです。
小田: うむ。横断テーマは経営企画がリードして方向性を出して欲しい。全社のルール改定も実作業はある程度時間がかかるだろうが、方向性は経営会議で決定していく。経営企画が役員、部長を巻き込んで原案を作成してほしい。
日野下: はい!
小田: あと1カ月、気を抜かずにいこうじゃないか。苦労を楽しんでな。
(続く)
業務改革視点での施策例
働き方改革・業務改革では、デジタル技術が威力を発揮しますが、「ツールの導入」というアプローチでは失敗します。デジタルツールはあくまでも道具のひとつであり、その道具の活用をきっかけに業務全体に視野をひろげ、全社ルールも含めて見直すことが効果の最大化につながります。
そのためには、プロジェクトを通じ、次のような点が重要になります。
- 経営企画やコンサルタントなど外部の視点で業務を見直す
- 部門横断の施策を検討する「場」を持ち、機能させる
- 全社ルール見直しの提言を奨励し、迅速に判断する
自身が今行っている業務を自身で壊し、自身で再設計するのは極めて困難です。
現場任せにせず、組織的に討議していくことが重要です。
柳剛洋(やなぎ たけひろ)
アビームコンサルティング株式会社 戦略ビジネスユニット ディレクター
シンクタンクを経て、1999年アビームコンサルティングに入社。戦略・経営計画策定、業務改革、経営管理分野のコンサルティングに従事。
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