今回の法改正は、従来の有休取得を労働者の権利から一歩踏み込んで、使用者に確実に取得させるように義務付けたことに最大の特徴がある。取得させないと罰則もある。年5日の有休を取得させなかった場合は30万円以下の罰金を支払う必要がある。30万円なんて安すぎると思う人もいるかもしれないが、そうではない。
厚生労働省のパンフレットには「罰則による違反は、対象となる労働者1人につき1罪として取り扱われる」とある。年5日を下回る社員がいれば1人につき30万円を支払うことになる。前述のワークスアプリケーションズの調査では、年5日未満の従業員が100人以上のいる大手企業が40%もあった。ということは30万円×100人で3000万円。もし500人いたら1億5000万円の罰金がかかることになる。
だから決して遠慮することはない。堂々と有休をとってほしい。できればこれを機会に5日といわずに10日、20日でも取得してほしい。
だが、もともと取得してほしくない経営者からすれば今回の義務化は迷惑千万の話だろう。そういう経営者に限って、あの手この手を使って取らせない、取らせても他の方法で法の抜け道を探すに違いない。すでにネット上でも悪質な経営者の手口がいくつか紹介されているが、 想定されている手口は以下の5つである。
1.年5日取得できることを従業員に周知しない。
2.年5日分を穴埋めするために夏期休暇や年末・年始休暇を削る。
3.週2日の休日のうち、所定休日の1日を出勤日とする。
4.祝日を有休に振り替えて有休を増やし、その範囲内で年5日を取得させる。
5.一応、社員の要望を聞いて有休日を決めるが、忙しいという理由で取らせない。
もっとほかにもあるだろう。「うちには有休なんてないから」という超ブラック企業は論外だが、例えば「法律で5日と決めているから、それ以上は無理」と、ウソをついて、有休を取得させないという悪質な経営者もいるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング