よく知られているように、中国は政府が国策としてEV化を進めていることから、中国市場に投入するクルマは基本的に電動車に限定される。しかもトヨタは、グローバル市場におけるトップメーカーの1社であり、他の日本メーカーとは生産台数のレベルが違う。同社は30年に電動車を550万台にするという目標を立てていたが、これを25年ごろまでに前倒しする方針を明らかにしており、生産台数に見合うだけの電池とモーターを早急に確保しなければならない。
ここで大きなボトルネックになりそうなのが電池の調達である。
トヨタとパナソニックは19年1月に、車載用電池に関する新会社を20年末までに設立すると発表した。両社からは3500人が新会社に移管され、リチウムイオン電池の生産や全固体電池の開発を共同で実施するという。パナソニックとの新会社設立は、電池の調達を確実にすることが目的だが、パナソニック1社だけでは、トヨタが必要とする電池をカバーするのは不可能というのが業界の一致した見方である。
先ほど説明したように、トヨタは25年までに大量の車載用電池の調達先を確保する必要に迫られているが、車載用電池の分野は、中韓メーカーが圧倒的に強く、パナソニックは数ある電池メーカーの1社にすぎない。つまり、トヨタは中国メーカーと本格的に提携しなければ、予定通り、EVシフトを実現できないことになる。
今回、トヨタが提携するCATLは11年に創業したばかりの新興電池メーカーである。EV化の波に乗って急成長を遂げており、車載用リチウムイオン電池市場ではパナソニックを抜いて世界トップ企業となった。同社はすでにホンダと提携しており、トヨタとの提携も近いとのうわさが流れていたが、あまり時間を置かず、正式な提携発表となった。
世界最大手の電池メーカーと組むことで、当面、電池の調達に苦慮するリスクは減ったものの、業界関係者の一部からは、EVの基幹部品を海外メーカーに握られることについて懸念する声も上がっている。だが、筆者はそれほど大きな問題にはならないと考えている。
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