そもそも、この声明は誰に向けて、何の目的で発信したのか、まったくもって不明である。メルパルクに予約を入れている他の顧客がこの声明を見て、安心感を覚えるとはとても思えないし、夫婦に対しては、事実上、クレーマーであると宣言しているようなものなので、むしろ宣戦布告に近い内容といってよいだろう。
実際、同社は「弁護士を通じてでしかコミュニケーションをしない」と通告しているわけだが、弁護士を通じたやりとりというのは、ビジネスの世界ではもはや最終手段であり、そう簡単には口にはできないレベルの話である。
こうした威圧的・攻撃的な声明を発表する理由として考えられるのは、威圧的に出れば顧客が萎縮すると判断しているのか、そうでなければ、自社に非はないという感情が先走っているのかのどちらかである。
恐らくは後者だと思われるが、いずれの場合にしろ、メルパルク側にメリットはない。同社の対応に問題があったのが事実であれば、力でそれを押しつぶす会社であるというイメージが出来上がってしまうし、逆に、原因が顧客の過剰な要求だったとしても、こうした対応を世間一般に知らしめることが顧客獲得にはつながらない。
先日、化学大手のカネカが、育休明けの社員を強制転勤させようとしたことで炎上騒ぎとなったが、ここでも同じような対応が見られた。元社員のツイートがネットで拡散したことから、同社は声明を発表したものの、これが全くの逆効果になってしまったのである。
声明は「育休をとった社員だけを特別扱いすることはできません」「当社の対応に問題は無いことを確認致しました」「今後とも、従前と変わらず、会社の要請と社員の事情を考慮して社員のワークライフバランスを実現して参ります」など、自社の対応は完璧で正しいという内容のオンパレードだったが、これは誰に向けたものなのか、全く分からない。
恐らくカネカのケースも「自分たちは悪くない」という強い思いが先にあり、それが全面に出てしまったものと考えられる。
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