土肥: G-SHOCKの新モデルが売れているそうですね。デザインは初代と同じスクエア型になっていますが、素材、構造、機能などは大きく違う。ケースやベルトなどの外装はステンレスを採用したほか、Bluetoothでスマートフォンと接続すれば、海外に行ってもその国の時刻に補正される機能を搭載しました。
G-SHOCKといえば、樹脂でつくられていて、ゴツゴツした印象があるのですが、新モデルはステンレスがピカピカしていてまぶしい。従来のモノとは違った商品をなぜつくることになったのですか?
泉: 2015年、スイスのバーゼルで腕時計見本市が開かれました。その場で、「スペシャルなコンセプトモデルを出そう」ということになって、金でつくったG-SHOCKを展示したんですよね。非売品として飾っていたので、売ることは考えていませんでした。ただ、多くの人から注目されたこともあって、社内から「外装をステンレスにすれば、つくれるのではないか」「どうせつくるのであれば、中の構造も進化させて、世に出すべきではないか」といった声があって、“とりあえずつくっちゃおうか”といった流れになりました。
土肥: 話を聞いていると、手軽につくれそうな印象を受けたのですが、時計って簡単につくれるのでしょうか?
泉: いえ、そんなことはありません。今回のモデルでいうと、初代のデザインを踏襲していたので、サイズが決まっていたんですよね。
土肥: (初代とフルメタルを比べて)ふむふむ、見た目はほぼ同じ。ということは、設計図もあるし、知見もたまっているし、つくることはそれほど難しくなかったのでは?
泉: いえいえいえ。同じサイズをキープするのに、大きなハードルが2つあるんです。これまでの5000シリーズを並べると、全く同じように見えるかもしれませんが、中の構造はかなり違う。1983年に登場したときには、ストップウォッチやアラーム機能などしか付いていなかったのですが、その後、ソーラー充電ができるようになったり、電波を受信できるようになったり、今回はBluetoothを搭載することになったり。
機能がどんどん追加されると、中の部品もどんどん増えていきますよね。しかし、サイズはそのまま。というわけで、部品を小さくして、配列を変えて、さまざまな工夫を凝らして、小さく小さく設計しなければいけません。
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