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大前研一が尊敬した「ウォルト・ディズニーの構想力」――ワニしかいない湿地帯に「ディズニーワールド」を作った大前研一大いに吠える!【前編】(6/7 ページ)

» 2019年08月08日 05時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]
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ウォルト・ディズニーの構想力

 もう一人、私が尊敬をしているのはアメリカのウォルト・ディズニーです。ウォルト・ディズニー氏は最初はアナハイムにディズニーランドを作って成功しましたが、どうしても人口が多い東海岸にも作りたいと考えました。ところが、東海岸の人口の多いところは、冬がすごく寒いんですよね。

 それで南の方を探していると、オーランドに巨大な地主がいました。地主が数人集まると広大な土地が確保できるという話になって、ヘリコプターで見に行ったそうです。ヘリコプターから見えるのは沼地ばかり。沼地の中にはワニしかいません。

 するとウォルト・ディズニー氏は、ここにディズニーワールド(ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート)を作りたいと考えました。最初のコンセプトはEPCOTという、未来都市の建設でした。ウォルト・ディズニー氏が「この場所にこういうものを作る」と言って模造紙で説明しているビデオを、オーランドに行ってもらってきたのですが、これは涙が出るくらいすごいものでした。プレゼンを見ている人が、「お前、気が狂っているんじゃないか」という顔で見ているんです。

 その後、計画途中で彼は肺結核でなくなりますが、兄のロイ・O・ディズニー氏が引き継ぎます。テキサスの石油商からの出資もあって、ディズニーワールドは完成しました。ウォルト・ディズニー氏は計画途中で亡くなりましたが、コンセプトは生き続けたんですね。

 ディズニーワールドに近いオーランド空港は、現在全米3位の規模を誇る空港になりました。南米からもヨーロッパからも直行便があります。ワニしかいないフロリダの湿地帯に、人が集まる通年型のディズニーランドを作ろうとした発想は、やっぱりすごいと思いましたね。

 こういう人の話をたくさん聞いていると、瀬戸物とかを見るのと同じで、同じようなことができるようになってくるんです。だんだん自然と発想が湧いてきます。

 私が個人的に好きなのは、有明あたりに行って、東京の将来の姿を考えることです。いずれ東京がマンハッタン化するぞと私は10数年前に言っていましたが、その通りになりましたね。マンハッタン化して、海風が入らず、虎ノ門がヒートアイランド化しているのがいまの状況です。反対側の勝どきや有明に行くと、未来が見えるんです。

 つまり、構想力とは、見えないものを見る力です。いいものを見せる環境を与えることによって、構想力が育つと私は思います。

photo マジック・キングダムのシンボルとなる「シンデレラ城」(Wikipediaより)

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