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大前研一が尊敬した「ウォルト・ディズニーの構想力」――ワニしかいない湿地帯に「ディズニーワールド」を作った大前研一大いに吠える!【前編】(3/7 ページ)

» 2019年08月08日 05時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]
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参考になるのはデンマーク型の教育

 日本の教育の問題点は、答えがあることを前提にしていることです。これはある意味では仕方がない面もありました。日本は明治以来、欧米に追い付け追い越せといって発展してきましたけれども、それは欧米が答えを持っていたから。欧米に学んで頑張ればよかったのです。

 文部科学省が学習指導要領を作っているのも、答えがあることを前提にして、その通りに学べばいいと考えているからだと思います。しかし、21世紀は答えのない時代です。すでにデジタル化によるイノベーションにより、既存の産業に破壊的な変革がもたらされるデジタル・ディスラプションが起きる時代に突入しています。これまでの常識は通用しないのです。

 日本がこれからどのように教育を進めればいいのかを考えたときに、参考になるのはデンマークです。デンマークは、21世紀は答えがない世紀だと見越して、90年代の半ばに学校教育を21世紀型の教育に再定義しました。

 どうなったかというと、教室で先生という言葉を使うのをやめました。日本ではまだ先生という言葉を使っていますが、先生は「先に生まれた」という意味です。先に生まれただけで答えを持っているという考え方は、恐ろしいことですよね。

 英語で先生はteacherですね。teachは答えがあるという意味です。答えがある前提なら成り立つけれども、21世紀は答えがない時代なので、そもそもteacherという名前でいいのか、という議論になりました。その結果、teacherという言葉を学校の現場から葬り去りました。

 先生という言葉がなくなると、授業の進め方も変わります。デンマークの学校は1クラス26人の場合が多いのですが、26人いれば、26通りの答えがあって当然です。全員が違うことを言った場合は、答えに近いのは誰なのかを、ディスカッションで探していきます。この人が言うことには説得力がある、と議論していくなかでリーダーシップが育つのです。

 先生は何をしているのかというと、答えを誘導しません。答えは分かりませんから。だからteacherの代わりにfacilitator(ファシリテーター)になりました。答えを見つけていくデンマーク型の教育は、日本でも参考になると思います。

 BBTではバイリンガルを育てるアオバ・ジャパン・インターナショナルスクールを経営しています。世界標準の教育を提供する国際バカロレアの資格を取得して教えていますが、バカロレアの場合は教科書を使う先生は一人もいません。自分の考えを伝えるのが先生だという考え方です。自分の考えを伝えないで、教科書通りのことや指導要領みたいなものを教えるだけでは、先生としてはアウトです。

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