消費増税後、「スーパー業界の勝ち組像」はどう変化する?小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)

» 2019年09月03日 07時15分 公開
[中井彰人ITmedia]

オーケー、ヤオコーの比較から見えること

 主要スーパーの売り上げを見ると、高品質鮮度重視のヤオコーと、ディスカウントのオーケーという、イメージでは対極にある食品スーパーが上位に並んでいるのが興味深い。鮮度のよい生鮮品、おいしい総菜の品ぞろえで消費者の支持を得ているヤオコーと、コスパNO1の評価を受けるオーケーの両社は、日本生産性本部の顧客満足度調査(スーパーマーケット部門)でも、1位がオーケー、3位がヤオコーというポジションにある(2位はコストコ)。顧客からの評価が高いオーケーとヤオコーが、実際にも売上を伸ばしているという結果となった。

 図表2は上場食品スーパーの主な経営指標で、上位5社を抽出したものになる(オーケーは上場していないものの、有価証券報告書などでさまざまな情報を開示している)。この経営指標のうち、業界特有のものだけを注釈しておくと、(1)既存店売上増減率≒店舗の集客力トレンドで高いほど強い、(2)在庫回転率≒数値が高いほど商品が売れて新しいものと入れ替わっていることで、商品の鮮度とも密接な関係がある、(3)売場1?あたり売上≒店舗面積あたりの売上、数値が高いほど繁盛していることを示す、といった指標である。

 一目瞭然ではあるが、オーケー、ヤオコーの両社は、主要な経営指標でも業界でトップクラスであり、顧客の支持があり繁盛していることで、結果として最も儲(もう)かっている企業だということが示されている。ここ数年の両社の成長は、その実力によって裏付けられていることが、よく分かる。

 では両雄相まみえればどうなるのか――。興味は湧くと思うが、意外にも、この両社が、直接対決をしている場面は、実はあまりない。両社の展開するエリアは、オーケーの言葉を借りれば、「国道16号線の内側を当面の出店予定地域と定めております」とのことであり、主に神奈川県東部から東京都南西部に展開している。一方ヤオコーは埼玉県を中心に、主に国道16号線の北側に展開しているため、ちょうどすみ分けているような状態となっている。

 こうした店舗展開から考えると、国道16号線の外側では鮮度が良い生鮮とおいしい総菜、内側ではコストパフォーマンスが、最も差別化要因となったともいえる。都市部でのディスカウント型の成長、郊外部での鮮度強化型の成長といった構図は、当面続くのではないだろうか。

photo (図表2)食品スーパーの経営指標ランキング上位5社(『ダイヤモンド・チェーンストア』(2019/7/1号)などより筆者作成)

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