2019年7月に鳴り物入りでスタートしたセブン&アイグループのセブンペイは、不正利用の発生によって9月末で廃止に追い込まれることとなった。セキュリティ面での脆弱性を突かれたということだが、この原因としてよく聞かれたのは、スマホ決済競争での出遅れに対する「焦り」があったということだった。〇〇ペイ各社の割引・キャッシュバックのキャンペーン合戦はこれまでにも増して激しくなり、テレビのグルメ紹介番組などでも「こんなおいしいコースが○○円で、〇〇ペイで払えば更に20%還元」といった具合に放映されている。
これらのスマホ決済が今の時期に加熱するのは、10月の消費税引上げ後に実施されるキャッシュレス・消費者対策事業に間に合わせるためである。2014年以来となる消費税増税まで1カ月を切った。
前回の消費税増税の前後の駆け込み需要と反動落ち込みとの落差は大きく、小売業界にとっては悪夢の記憶となっている一方、今回はそうした駆け込みが起こる様子はあまりない。キャッシュレス・消費者還元事業が実施されるため、中小・小規模店舗で買い物すれば、5%還元される。(条件はあるが)増税後に買ったほうが、消費者はお得なので、駆け込む必要がないのである。
ただ、駆け込みと反動がなかったとしても、消費者の懐からは還元終了後、2%分が税負担に持っていかれるのだから、時限的措置が終われば相応の落ち込みが来るだろう。その後の影響予測は各専門家にお任せするとして、今回は過去の増税後に起こったことを、われわれの生活になじみ深いスーパーの業界で振り返ってみた。
表(図表1)は、増税直後の15年と19年の関東地方の主要スーパーの売上を比較したものだ。これは単純な引き算の結果にすぎないのだが、増税後、どんなスーパーが成長したのかという傾向が分かる。ざっくり言えば、ドンキやオーケーなどのディスカウント型、イオンや大手商社といった大手資本グループ型、ヤオコーに代表される鮮度強化型といった3類型が成長したというのが、ここ数年における客観的な事実になる。
概況を述べるとすれば、明確な価格訴求ができる、もしくは鮮度の良さを訴求できる企業が売上を伸ばすことができた。一方、大半の地場スーパーはイオンや大手商社といった大手資本傘下の企業の設備投資の力に押されて、売上を伸ばすことはできなかった。同時期にコンビニエンスストア、ドラッグストアの売上は大きく拡大している。抽出した中堅以上の企業が、プラスかほぼ現状維持であることを考えると、中堅以下の中小スーパー、小売店の売上は減収となっていることが予想される。総合的にみて、前回の増税後は、大手資本や特徴ある企業への上位集中が進行したことが見て取れる。
中国人の間で日本の「のり弁」が話題沸騰 SNS分析でその「意外な真相」を追う
結婚式場のメルパルク炎上に見る、日本企業特有の「根深い欠陥」とは
店舗消滅! 「駅前の光景」が“荒廃”するこれだけの理由
アパレル、ウエディング……「キラキラ系業界の接客女子」が転職に行き詰るワナとは
「バイトテロ」が繰り返される真の理由 大戸屋一斉休業で問う
メルカリが電子決済の覇権を握る日
「マツキヨ・ココカラ連合」誕生が意味するもの
「24時間からの撤退」を突き付けられたコンビニ本部の“生存戦略”
「セブン24時間見直し」の衝撃――ローソン竹増社長に問う“コンビニの持続可能性”
コンビニオーナー残酷物語 働き方改革のカギは「京都」にあり
ローソンが「24時間営業の見直し」を検討する理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング