さて、ここまではヤオコーとオーケーの話になったが、ここ数年で勢力拡大したスーパーの多数派は、「大手資本」であることは先述の「売上動向」が示している通りだ。イオン・グループのUSMH(マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東)、三菱商事グループのライフコーポレーション、住友商事グループのサミットなどおなじみの有名銘柄が、大手資本の総合力をバックに着実に勢力拡大を進めている様子がよく分かる。
ここ数年に関しては、出店用地確保においても、立地条件のいい物件の競争が激化しており、大手の情報力、資金力がかなりものを言ったという話もよく聞く。何よりも、人材確保が難しくなっている今、どうしても大手資本の方が人材供給面で有利であることは否めない。これからも、大手資本はこうした総合力を背景に、着実に地域シェアを積み上げていくのだろう。
なかでも、小型スーパーという新たな業態をほぼ確立した、イオン・グループのまいばすけっと、は注目すべき存在だ。19年2月の決算公告をみると、約800店、売上1537億円、経常利益20億円にまで成長し、過去の累積赤字についても今期中には解消するとみられ、これから本格的な拡大期に入るとみられる。
これまでは原則、東京〜横浜あたりの人口密集地に出店して、バス停ごとに1店という過密な展開で「実験」を行い、ついにここまできた。この小型スーパーの店舗平均売上は約1.9億円であり、大手コンビニエンスストアの店舗売上2億〜3億円を下回って存続可能な生鮮ミニスーパーということになる。関東ではこれから高齢化が急速に進行し、それに伴ってクルマを失った高齢者世帯の「買い物難民問題」が、深刻化することがほぼ間違いない。こうした課題解決に、現状、最も適した業態がまいばすけっと、なのだ。関東の買い物難民という大きな成長余地を持ったまいばすけっとは、これからさらに店を増やしていくだろう。
この数年で成長したスーパーを振り返ってみたが、そのほとんどは大型店に大きな駐車場を備えたタイプのチェーンだ。首都圏でも中心部を少し離れれば、買い物の移動手段はクルマであることが多いので当然な一方、これからの10年でこの状況は大きく変化する可能性が高い。
関東、それも首都圏エリアは直近まで、人口増加傾向を維持していたものの、もうすぐ人口流入が止まり、高齢化だけが急速に進行する時代になる。首都圏でも若年層のクルマ離れは進んでいるし、高齢者の免許返納も今後加速的に進行することが確実だ。そうなれば、おのずと都市周辺の買い物のスタイルは変わっていき、これまで成長してきたタイプのスーパーもそのまま勝ち組を維持できるとは限らないだろう。
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