企業がよく新卒採用で、人を選ぶ基準としてあげる「コミュニケーション能力」。2018年の調査では実に82.4%もの企業が「選考時に重視する要素」として挙げ、16年連続で1位になっているなど、よく聞く言葉ではありますが、曖昧な概念のような印象も受けます(*:日本経済団体連合会「2018年度 新卒採用に関するアンケート調査」)。
前回の記事「滝沢秀明がジャニー喜多川の「後継者」となった理由 」で紹介したように、ジャニー喜多川は以前、10代の滝沢秀明にこう諭したことがあるといいます。「ユーに10あげるから、1返しなさい」。滝沢はこう振り返ります。
「それは、Jr.がテレビ局の人に挨拶(あいさつ)をしなくて、ジャニーさんに怒られたときの言葉なんです。チャンスや環境、すべてを与える。挨拶は1だ。だから最低限、挨拶はしろって」(*:「MyoJo」2015年5月号)
この言葉を彼らが順守してきたことの証拠であるかのように、ジャニーズのタレントたちの現場での振る舞いが素晴らしかったというエピソードは枚挙に暇がありません。“努力の天才たち”であるジャニーズタレントに、仕事術を学ぶ『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)。本書では、16人のジャニーズタレントのさまざまな努力のかたちを紹介していますが、特にコミュニケーション技術への工夫が見られるのが、TOKIOの国分太一とV6の井ノ原快彦です。
ともにグループのCDデビュー時は一番人気とはいい難かったものの、その後、日本の朝の顔にまで上り詰めた、名司会者である2人に、ジャニーズ流・コミュニケーション術を学びます。「コミュニケーション能力」という言葉の実態がこの2人の中にあるはずです。
国分太一は、“ジャニーズ史上最も売れた男”と言っても過言ではありません。『タレント 番組出演本数ランキング』では、14年から5年連続で1位を獲得しています。18年は年間番組出演本数663本。ジャニーズどころか全タレントの中で最多の出演本数です(*:ニホンモニター「2018タレント番組出演本数ランキング」)。
NHKと民放キー局全てで同時にレギュラー番組を持つという快挙を遂げたのが08年。これは、中居正広でも達成していない偉業です。もちろん、CDの売り上げ、舞台の出演本数など、何をもって“売れた”とするかはさまざまですが、少なくともテレビタレントとしてはかなりお茶の間に浸透したジャニーズであることは間違いありません。
国分のことを「撮影現場でいちばん気を配っている」(*:「女性自身」2014年5月27 日号)と評するのは、テレビ東京系『男子ごはん』で共演している料理研究家の栗原心平。国分自身も「心がけてるのは、周りの人たちがいつも笑っていられること(*:「MORE」2008年1月号)」と語っています。そんな国分の哲学がつまっているともいえるのがこのコメントです。
「知らない人と目が合ったら、とりあえず『こんにちは』って先に言う。人と触れあえれば、どうやっても生きていけると思うんです。この業界やめても、どんな田舎に住んでも。自信はある(笑)」(*:「MORE」2008年1月号)
誰にでも自分からあいさつをする、とはタレントらしからぬ、と言ってもいい腰の低さです。
もちろん、最初からそうだったわけではなく、20代の頃は尖(とが)っていて「人の注意は一切聞かなかった」(*:「STORY」2013年5月号)「周りの声も聞かずにただ必死だった 」(*:「MORE」2008年1月号)「タレントが1番だっていう気持ちもあった」(*:「MORE」2008年1月号)と振り返っています。しかし「そうじゃないと気づいてからはひとつひとつの出会いが自分を変えていった」(*:「MORE」2008年1月号))のです。
その変化のきっかけの最たるものが、テレビ朝日系列で05年から約4年にわたって放映された人気番組『オーラの泉』で共演した、美輪明宏と江原啓之との出会いです。
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