一方日本のエネルギー自給率はたった8%。これにノルウェーと同じ処方箋を書くようならその医者はヤブ医者だ。心肺停止状態にある患者にAEDが効果があるからといって、微熱で来院した患者にまでAEDを使われてはたまらない。大は小を兼ねるわけではないのだ。
世界各国は、それぞれに異なるエネルギー事情、環境事情がある。その違いをしっかり考慮して、それぞれ最適なソリューションを用意しなければならない。科学的思考能力があれば「EV以外は必要ない」などという万金丹思想には至らないはずである。マツダはこれまでも「EVが要らない」などとは一言もいっていない。「内燃機関“も”大事でしょ」といっていただけなのだが、いつのまにやらそれをしてアンチEVと思っている人が多い。
各国のCO2排出量規制の動向(マツダ資料より)
エネルギー事情、環境事情だけでなく、経済力の個人差も大きい。グローバルにマーケットを見れば、顧客の購買力はさまざまであり、クルマへの支出を考える時、「100万円は出せない」と感じるユーザーもいれば、「1500万円以下の安物になんか乗りたくない」というユーザーもいる。多様なのだ。
もちろんその間にもさまざまな事情の人がいる。例えば日本の多数派は「どんなに頑張っても300万円が上限」という人が多い。プリウスが普及したタイミングも、価格が250万円を割って、乗り出し300万円を切った時だ。現在の日本の平均的ファミリーカーになっている5ナンバーミニバンだって、同じく250万円を切っているからあれだけ売れる。
いくら素晴らしいソリューションでも、その国の顧客の平均的購買力を超えた価格では普及しない。だからこそマルチソリューションが必要なのだ。しかもマクロに見れば購買力が低い方が圧倒的に数が多い。つまり「安価な環境技術」なくしてグローバル全体の環境対策はできない。だからマツダは新興国を中心とした「多数派のための環境負荷が低い内燃機関」に力を入れてきた。
- マツダのEVがスーパーハンドリングEVになった仕組み
昨日の記事でマツダのEVの、常識を覆すハンドリングフィールについてのインプレッションを書いた。革新的なハンドリングはどうやってもたらされたのか。秘密は、エンジンよりも精緻な制御が可能なモーターを使って、Gベクタリングコントロール(GVC)が、常に接地荷重のコントロールを行い続けているからである。
- 自動車メーカーを震撼させる環境規制の激変
「最近のクルマは燃費ばかり気にしてつまらなくなった」と嘆いても仕方ない。自動車メーカーが燃費を気にするのは、売れる売れないという目先のカネ勘定ではなくて、燃費基準に達しないと罰金で制裁されるからだ。昨今の環境規制状況と、それが転換点にあることを解説する。各メーカーはそのための戦略を練ってきたが、ここにきて4つの番狂わせがあった。
- 明らかにされたマツダのEV計画
ここ数年マツダは内燃機関の重要性を訴えており、SKYACTIV-Xを筆頭とする技術革新を進めてきた。中にはそれをして「マツダはEVに否定的」と捉える層もあるが、実はそうではない。EVの必要性や、今後EVが増えていくということを、マツダは一切否定をしていないのだ。
- マツダの決算 またもや下がった利益率の理由
売上高は増収だったが利益面の落ち込みが激しいマツダの決算。北米と中国市場の不振が響いた結果だ。今後に向けて、販売店改革とパワートレーンの刷新を進めるが、これが北米市場で実を結ぶかどうかが焦点となる。
- 自動車を売るビジネスの本質 マツダの戦略
原理原則に戻ると自動車ビジネスもシンプルだ。商品とサービスに魅力があれば、新車を正価、つまり値引きせずに売れるから中古車の相場が上がり、その結果下取り価格が高いので、買い替え時により高いクルマが売れる。これが理想的サイクルだ。それを実現した例として、マツダの取り組みを歴史をひもといてみよう。
- 大ヒットの予感 マツダCX-30
Mazda3をベースにしたSUV、CX-30。CX-3はクーペ型SUVでパーソナルユース、CX-30はファミリー層に向けた商品だ。大人4人をしっかり乗せ、ある程度のラゲッジ積載量を備えつつ、タワーパーキングに入れられるコンパクトSUVという、ラインアップ上の隙間を埋めた。
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