マツダは発売前のCX-30(試乗記事参照 )をベースにこの新しいEVのプロトタイプを仕上げ、オスロ郊外のワインディングロードを中心に、われわれに試乗の機会を与えた。「MAZDA e-TPV」とボディに描かれたこのクルマは、あくまでもプロトタイプであり、いってみればパワートレインとシャシーの性能を確認するためのもの。CX-30そのままの外観はダミーで、10月24日から始まる東京モーターショーで、本来の専用ボディが与えられてスポットライトを浴びることになっている。
一言でいえば、それは「スーパーハンドリングEV」だった。読者の中には、例えそれが発電専用であれ「ロータリーを早く」という人も少なくないだろうが、それはもう少し先になりそうだ。ひとまずは純バッテリーEVである。
主要なスペックは図を参照していただきたい。バッテリー容量から見て航続距離は多分300キロ以下だろう。モーターの出力はテスラ Model 3の半分以下、バッテリー容量も半分少々。何が言いたいかといえば、テスラ以降のEVがその特徴としてきたワープするかのような、あるいはマッスルカーのような怒涛な低中速加速をこのクルマは持っていない。温室効果ガス9割削減課題というクレージーな目標を批准してしまった状況で、怒涛の加速とかいってる場合かどうか考えれば分かるだろう。「ゼロエミッションだから」といっても所詮完璧なゼロではないし、エネルギー保存の法則は変わらない。エネルギーは大切に使うべきだ。
マツダのプロトタイプEVのスペック(マツダ資料より)
さて、この「e-TPV」は、もちろん遅くてイライラすることはなく、普通の内燃機関と同等以上の加速力は備えている。実はこの新型EVの圧巻の性能はそのハンドリングにある。クルマの操作系が全て随意筋と化したかのように思った通りに動く。印象としては100回操作して100回思った通りの挙動を示してくれる。
これに乗ってみて、従来の内燃機関車両では、ドライバーの要求をクルマの動きに変換するに際して、車両側の反応を見ながら常に微細に修正が必要だったことを改めて思い知った。
マツダのEVがスーパーハンドリングEVになった仕組み
昨日の記事でマツダのEVの、常識を覆すハンドリングフィールについてのインプレッションを書いた。革新的なハンドリングはどうやってもたらされたのか。秘密は、エンジンよりも精緻な制御が可能なモーターを使って、Gベクタリングコントロール(GVC)が、常に接地荷重のコントロールを行い続けているからである。
自動車メーカーを震撼させる環境規制の激変
「最近のクルマは燃費ばかり気にしてつまらなくなった」と嘆いても仕方ない。自動車メーカーが燃費を気にするのは、売れる売れないという目先のカネ勘定ではなくて、燃費基準に達しないと罰金で制裁されるからだ。昨今の環境規制状況と、それが転換点にあることを解説する。各メーカーはそのための戦略を練ってきたが、ここにきて4つの番狂わせがあった。
明らかにされたマツダのEV計画
ここ数年マツダは内燃機関の重要性を訴えており、SKYACTIV-Xを筆頭とする技術革新を進めてきた。中にはそれをして「マツダはEVに否定的」と捉える層もあるが、実はそうではない。EVの必要性や、今後EVが増えていくということを、マツダは一切否定をしていないのだ。
マツダの決算 またもや下がった利益率の理由
売上高は増収だったが利益面の落ち込みが激しいマツダの決算。北米と中国市場の不振が響いた結果だ。今後に向けて、販売店改革とパワートレーンの刷新を進めるが、これが北米市場で実を結ぶかどうかが焦点となる。
自動車を売るビジネスの本質 マツダの戦略
原理原則に戻ると自動車ビジネスもシンプルだ。商品とサービスに魅力があれば、新車を正価、つまり値引きせずに売れるから中古車の相場が上がり、その結果下取り価格が高いので、買い替え時により高いクルマが売れる。これが理想的サイクルだ。それを実現した例として、マツダの取り組みを歴史をひもといてみよう。
大ヒットの予感 マツダCX-30
Mazda3をベースにしたSUV、CX-30。CX-3はクーペ型SUVでパーソナルユース、CX-30はファミリー層に向けた商品だ。大人4人をしっかり乗せ、ある程度のラゲッジ積載量を備えつつ、タワーパーキングに入れられるコンパクトSUVという、ラインアップ上の隙間を埋めた。
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