クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
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» 2019年09月09日 07時00分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:EVにマツダが後発で打って出る勝算 (7/7)

[池田直渡,ITmedia]
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「EVである」ことは既に特徴にならない

 試乗時間は1時間程度と限られていたが、いつまでも乗っていたい。というか、むしろ職業柄にもなくその場で欲しくなった。

 冷静に考えれば賃貸住まいで自宅に充電設備もないし、車両価格もまだ高いだろう。航続距離も限定的だ。筆者が実際に購入するのは難しいだろう。しかし重要なのは、動力源が何であれ、運転中にドライバーを魅了する何かが存在することだ。そういう意味ではロードスターの価値と極めて近い。

近い将来EVだけでなく、PHVやシリーズハイブリッドなどのバリエーションが加わってくる

 すでに数多あるEVにマツダが後発で打って出て、勝算があるとすれば、そういう「走り」にマツダらしいリファレンス(基準)が存在することだ。今、世界の自動車メーカーからデビューしつつあるEVは、徐々にそういうリファレンスを持つクルマになりつつある。各方面の情報を見る限りジャガーのI-PACEやポルシェのタイカンはそういうものだと思う。EVであっても、乗ればジャガーらしい、あるいはポルシェの名に恥じないEV。各社各様のリファレンスを芯に据えたEVの登場によって、ただEVであるというだけでは価値が見出せない時代に突入しつつある。

 トヨタ自動車の豊田章男社長は2年前にこう発言している。「あるスポーツモデルのEVに乗ってみてほしいといわれて運転したことがある。『EVですね』という感想で、特徴を出しにくいと思った。ブランドとしての味を出すことが挑戦になっていく」

 今回のマツダのプロトタイプEVは、それに対してのひとつの答えになっていると思う。乗って楽しい、スーパーなハンドリングを持つマツダらしいEVだ。

 しかもコンポーネンツ化されたそれは、多様な発展系を持っている。例えば、日産のノートe-POWERのようなシリーズHV、つまり動力源はモーターのみで、これにロータリー発電機で電力を供給するモデルならば、先ほど懸念した充電などの問題があらかた解決する。なんとも期待できるではないか。

 さて、明日掲載予定の続編では一体どういう仕組みでこのスーパーハンドリングEVができたのか。その詳細を解説する。実はその正体はあのGベクタリングコントロール(GVC)だったのである。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。


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