クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
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» 2019年09月09日 07時00分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:EVにマツダが後発で打って出る勝算 (3/7)

[池田直渡,ITmedia]

マツダのxEVとは何か?

 ただし、一方で温暖化に備える地球環境改善のためのルールは厳格化も進んでいる。その視点で見れば、「内燃機関の改良だけしていればいい」とは言えない。

 一応余談として述べれば、パリ協定を原点とする2050年までの温室効果ガス9割削減は、あまりにも現実的ではなく、世界のクルマを例外なくEVにしても焼け石に水である(記事「パリ協定の真実」参照)。例えば、国交省によれば、我が国における全CO2排出量における運輸部門の占める割合は17.9%。発電を完全に再生可能エネルギー化して、内燃機関を全面禁止にし、CO2排出を完全にゼロにしたとしても削減できるのは2割以下だ。

日本全体のCO2排出量の部門別状況(国交省資料より)

 さらに産業部門からの排出を全部ゼロにして34.7%。家庭部門の排出をゼロにして15.6%。それだけやってもまだ7割に満たない。いうまでもないが運輸も産業も家庭も排出ゼロは絶対無理だ。仮に終身刑か死刑くらいに厳罰化したとしても不可能なことは実現しない。つまり9割削減を死守する立場からは、「人類こそが地球の敵だ」というしかない。「地球が大変だから」という概念は分かるが、数字をベースに9割を本気で達成しようとすれば、人類はクルマはおろか、インターネットも医療も食糧生産も全部をゴミ箱に放り込んで原始に戻り、天然自然の淘汰(とうた)によって人口を激減させるしか方策がない。

 というように、宗教がかった「極端な数値目標」を設定する愚かしい環境政策を問題視しつつも、可能な範囲で環境改善に努力すべきなのは事実であり、世界各国で厳格化される規制値をクリアするという社会的課題にもまたマツダは応えていかなくてはならない。当たり前の話だが、世界の全てが新興国というわけではなく、もう少し財布にゆとりのある国も当然ある。そこでマツダは、得意のコモンアーキテクチャーの概念に則って、コンポーネンツ型のxEVを追加で打ち出した。

一つのシステムでさまざまな電動化車両を実現できるマツダの仕組み(マツダ資料より)

 このシステムは、コンポーネンツを組み替えることによって、一つのシステムから、モーターと大型バッテリーでEVに、モーターと中型バッテリーと充電機能でPHV(プラグインハイブリッド)に、モーターと中型バッテリーとロータリー発電エンジンでレンジエクステンダーEVに、モーターと小型バッテリーとロータリー発電エンジンでシリーズ型ハイブリッドになる。

 電動車両の価格を支配するのは現状バッテリーの価格だから、システムが必要とするバッテリーサイズによって価格もある程度の幅に展開できる。つまりユーザー層の購買力と、地域のエネルギー/環境事情に応じた製品を作り出せるのだ。現実に即して非常によく考えられたシステムである。

Mazda3でデビューしたシャシーは、これらの電動化プランがあらかじめ織り込まれていた。床下に薄型のバッテリーを収める

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