土肥: 先代の店を引き継ぐ形で、店は2000年にオープンしました。当時の売り上げは、どのような感じでしたか?
伊原: 売り上げは、いまの10分の1ほど。ただ、すぐにお客さんが増えて、売り上げも伸びていきました。多くの人から「なぜですか?」「その要因は?」と聞かれるのですが、よく分からないんですよね。つくっているパンを変えたわけではありませんし、レシピも大きく変えたわけではありません。30年前から同じレシピでつくっている商品も、たくさんあるんですよね。当時、パンブームが起きていたので、その流れにうまく乗れたからかな。
土肥: そうなると、他の店も売り上げを大きく伸ばしていることになりますよね。ただ、個人経営のパン屋がものすごく増えているといったデータはありません。
伊原: ウチがやってきたことは何か。ひとつあげるとすると、「焼きたて」にはこだわってきました。「焼きたて」をウリにしているパン屋はたくさんありますが、そうした店とどのような違いがあるのか。「焼きたて」というのは、一定の数を出し続けなければいけません。つくっても売れなかったら、「焼きたて」を出すのは難しいので。
店をオープンした当初はいまほど売れていなかったので、「焼きたて」をなかなか出すことができませんでした。ただ、しばらくすると、「焼きたてをつくる→売れる→焼きたてをつくる→売れる」といった感じで、いいサイクルが生まれるようになりました。
土肥: 例えば、カレーパンの場合、どのようなサイクルでつくっていたのですか?
伊原: オープン当初、1日30個ほどしか売れていなかったので、朝・昼・夕の3回にわけてつくっていました。朝の9時に商品を出したところ、揚げたてのカレーパンを食べたいお客さんがたくさん来る。10時ころに来たお客さんから「カレーパンはないですか?」と聞かれる。しかし、完売していて、棚に商品が並んでいない。
じゃあ、10時に「揚げたて」をつくれば、もっと売れるのではないかと考え、10時につくることに。このように1日に何度も揚げたてを出すことによって、「いつ行ってもあそこのパン屋で、揚げたてのカレーパンを買えることができる」と感じてもらえるようになりますよね。
土肥: カレーパンだけでなく、他のパンも同じように「焼きたて」をせっせと提供していたわけですね。
伊原: はい。
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