では、五輪ではないとすれば一体どこに大きなポテンシャルがあるのかというと、ズバリ「武道」である。
日本には、空手、柔道、剣道、合気道、居合道など、多くの伝統的な武道が存在しているのはご存じの通りだが、それらの発祥や盛んな地域が日本各地に点在していることはあまり知られていない。例えば空手なら沖縄、剣道ならば九州、居合道は山形県村山市、薙刀の兵庫県伊丹市などである。このような「武道の街」を外国人観光客でも気軽に演武や組手を観戦したり、体験入門などができるような整備を行って「聖地」として大々的に発信する。
野球のヤンキー・スタジアム、サッカーのウェンブリー・スタジアム、ラグビーのイーデン・パークなどに世界中から多くの観光客が訪れているように、「武道の聖地」にも外国人が大挙として押し寄せ、今回のラクビーW杯のような「地方のにぎわい」を生み出せるかもしれないのだ。
なんてことを言うと、「確かに空手や柔道も日本が世界に誇るものだが、その前にまずは外国人観光客からも人気のあるプロ野球やJリーグを観光資源とすべきだろ」という声が、熱心な野球ファン、サッカーファンから飛んできそうだが、残念ながらこれらのスポーツを整備しても効果は限定的だ。
日本人がどんなにゴリ推ししても、「客」のほうが求めていないからだ。
2017年、スポーツ庁がアメリカ、タイ、オーストラリア、中国、韓国、香港、台湾、香港という7カ国の観光客を対象にして「スポーツツーリズムに関する海外マーケティング調査」を行なった。その中で、「日本で経験してみたい『みる』スポーツツーリズム」について質問したところ多くの国から名前が挙がったのが、野球でもサッカーでもなく、柔道、空手、剣道、合気道という「武道」だったのである。
その内訳は、中国が最も高く50.7%、次いでアメリカ37.3%、タイ37.3%、香港35.3%、オーストラリア28.7%と続く。我々日本人が「外国人観光客から人気」というイメージを抱く大相撲でさえ中国42%、アメリカ26.7%、タイ33.3%ということを踏まれば、実は「武道」こそが、日本が国をあげて打ち出していくべき観光キラーコンテンツだということがよく分かる。
ちなみに、野球に関しては韓国と台湾だけが突出して40%台である以外、よその国は10%台。サッカーもアメリカやタイが30%と高いものの、他の国は13%〜23%あたりにいる。
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