このような事態を避けるためにも、競技人口を増やしていくしかないのだが、人口が急速に減っていく日本ではもはや不可能に近い。そうなると、日本の武道を後世に残していく道はひとつしかない。海外競技人口を増やして、「日本の武道」から「世界のBUDOU」にしていくのだ。
おいおい、ずいぶん簡単に言うじゃないか、と思うかもしれないが、実は日本の武道にはその「勝機」が十分すぎるほど持っているのだ。
例えば、ミズノの調査(2016年)によると、日本の柔道人口は約16万人だが、ブラジルではなんとその12倍の200万人だという。フランスには56万人、ドイツも18万人もいる。また、空手の競技人口にいたっては、国内では100万人程度だと言われているが、全世界では7000万人にのぼるとも言われているのだ。
つまり、空手や柔道などの武道は、我々日本人が思っている以上にはるかに世界で支持をされているものなのだ。
ここまで言えばもうお分かりだろう。「武道ツーリズム」は、単に武道を見世物にして外国人観光客にカネを落としてもらおう、というような「伝統文化のたたき売り」ではなく、海外に幅広く普及している空手や柔道など武道の「聖地」が日本であることをあらためて世界に発信することで、国内の武道を活性化させていくことが狙いなのだ。
冒頭で申し上げたように今回、ラグビーW杯は大いに盛り上がったが、国際競技団体World Rugbyの2018年資料によれば、日本の競技人口は10万8796人で全人口に占める割合は0.08%。これは今回W杯に出ている国の中では際立って低い比率だ。ニュージーランドもラグビー競技人口自体は15万人とそれほど変わらないが、総人口に対する割合では3.2%も占めている。
そのような意味では、日本のラグビーはかなり衰退傾向にあると言っていい。しかし、今回W杯が日本で開催されたことで海外からも注目を集めて、日本人も大いに盛り上がった。日本代表の試合に心を打たれた子どもたちの中には将来ラグビーをやってみたいと夢見た子も多くいたはずだ。
このようなラグビーW杯の成功を踏まえれば、同じように日本の武道が海外から注目を集め、外国人観光客が武道目当てに日本中を旅すれば、武道人口も増えていくかもしれない。
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