ラグビーW杯の成功で見えた「武道ツーリズム」のポテンシャルスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2019年10月23日 08時15分 公開
[窪田順生ITmedia]

「客」の立場に立っていない

 では、これだけ多くの外国人観光客が「日本の武道」を見てみたいと願っている中で、そのニーズに日本側が応えているかというと、残念ながらそうとは言い難い。

 確かに、外国人観光客向けの空手や柔道の体験ツアーなども増えてきている。外国人にいきなり武の心や礼節を説くようなハードルの高いものだけではなく、かなり一般向けというか、レジャー色の強いものも登場してきた。

 例えば、外国人観光客が剣道体験が行えるSAMURAI TRIP(サムライトリップ)というプログラムでは、試合形式のミニゲーム体験や、店内に剣道グッズが溢れる「剣道居酒屋」で、オリジナルの和食メニュー「サムライ飯」を振る舞うなんてものまで出てきて、海外メディアにも多く紹介されている。

 だが、厳しいようだが、まだまだ「客」の立場に立っていない。空手が好き、剣道が好きという親日家・外国人に向けたようなマニアック観光であって、フツーの外国人観光客が楽しめるような内容になっていない。

 例えば、タイのムエタイは、主要都市に必ずスタジアムがあって毎日どこかで試合が行われている。格闘技をそこまで知らない、興味のない観光客でも気軽に観戦できるのだ。また、「体験」のハードルも低い。タイ国政府観光庁のムエタイのPRページを引用しよう。

 『外国人の練習生を受け入れているジムはバンコクなど大都市をはじめ各地にあり、ビギナーはもちろん、経験者もプロのコーチから実戦的な指導を受けることができます。多くの場合、グループ・トレーニングやマンツーマン・トレーニングといった選択も可能。ジム内に宿泊設備が用意されているところもあり、リーズナブルな価格で気軽にトライすることができます』

 つまり、今の日本には必要なのは、ここへ足を運んでみれば、毎日とりあえず何かしらの「武道」がライブで見れる、というような「武道スタジアム」の整備、そして外国人観光客がふらっと立ち寄って、体験できるような道場をもっと増やしていくことだ。

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