そういうものに仕上がったのには理由がある。マツダはMX-30を「いかにもEV」というものに仕立てなかった。具体的にいえば、アクセルを踏んだ瞬間のワープするような加速はいらないと考えた。もちろんこれは大容量バッテリーが保障する瞬間大電流が期待できないからという物理的な特性もあるが、ハンドリングも含めた車両の動きのマネジメント全体からも、「そういうもの」を異物視する姿勢は見て取れる。
同様にいわゆるワンペダルドライブも重視しない。マツダにとって、良いクルマとはEVであろうが、内燃機関であろうが変わらない。EVである前にまずはクルマであること。そのクルマの動きのマネジメントとして理想的なのはどんな動きなのかというのが揺らがずに存在している。
そういう教条主義的な真面目クンなところが良くも悪くもマツダで、時にもうちょっとチャラけたって誰にも怒られはしないだろうと思うことはあるのだが、一方で変わらぬ姿勢に対する安心感もあったりする。
結論めいたことを書けば、世の中の流れに逆らって、とことん真面目なEVを追求した結果出来上がったのがMX-30ということで、そういう真面目さ故に直感的にいろいろ分かりにくい。何か凄いところは? と聞かれて、「インターハイ出場」とか「学年トップ」とかそういうのではなく、「無遅刻無欠席」みたいなところがMX-30にはある。やろうと思うと大変だが地味なことこの上ない。
ただ、そんな真面目なエンジニアリングが世の中にどう受け止められるかはとても興味深い。さて、せっかくモーターショーの話なので、後編では「魂動デザインとMX-30」について、見て形で分かる話をしてみようと思う。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。
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