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» 2019年11月08日 05時00分 公開

小売・流通アナリストの視点:「セブン1000店舗閉鎖・移転」の真の意味 “加盟店の一揆”は何をもたらすか (2/4)

[中井彰人,ITmedia]

迫られる収益構造の転換

 やはりこのグループにとっての最大の課題は、市場飽和を目の前にしているコンビニ事業なのだろう。出店することで売上を伸ばせば、本部の増収が維持できるという構造で成長してきた時代が終わり、加盟店と共存しつつ低成長下で収益をあげていく体制に転換せねばならない難しい時期にあることは明白だ。会社計画でも加盟店支援に100億円を投入していくとのことだが、今後その規模はさらに増えていくとの予測もあり、収益構造も大きく変わらざるを得ない。

 しかし、コンビニのビジネスモデルが加盟店との共存を大前提にしている以上、今後、加盟店支援をおろそかにする企業が存続できるはずもなく、市場飽和を前提としたモデルへの転換が急務だ。今や、一大産業に成長したコンビニ業界がこうした方向転換をやり遂げるには相応の時間が必要であり、当面、セブンをはじめ業界各社の収益下振れは避けられない厳しい時代が続くことにはなるだろう。

 ここで注目しているのは、セブン&アイ・グループの構造改革施策の セブン-イレブン1000店舗の閉鎖、移転という方針だ。「1000店舗閉鎖」とだけ聞くと、普通は相当不振店が増えたのではないか、と思うだろうが、ここ数年のセブン-イレブンの閉鎖、移転店舗数は、700〜800店程度といった水準だった。

phot セブン-イレブンの出店数、退店数の推移(セブン&アイHD 決算捕捉資料より)

 1000店舗閉鎖、移転というのは、確かに大きな数字だが、実際には2、3割増しといったところであり、実は驚くような話でもない。また、その内訳をみると、600〜700店が移転によるものという点は見ておかなければなるまい。移転とは、近所にもっといい店舗立地がでたので、費用が掛かるが放っておくと他社が出店して、現状より売上が厳しくなるので、自分が引っ越してしまう、というようなイメージだ。業績が不振でやむなく引っ越すというのもあるだろうが、これ自体はチェーンストアとして極めて妥当な企業行動なのだ。

 チェーンストアにおいて、店舗ごとの業績を左右する最も重要な要素とは、一般的には8割方は立地(いい場所に店を構えるか否か)だといわれている。リアル店舗である以上、相応の設備投資を伴う出店は、その場所選びに失敗すれば設備投資分を毀損することになるため、場所選びの巧拙が企業業績を大きく左右することは、言うまでもない。その点でいえば、現在のコンビニ大手は1万店以上の店舗網構築の歴史から、最も場所選びのノウハウに優れているチェーンストアであることは間違いない。

 ただ、そうしたノウハウがあったとしても一定の比率で失敗するのは避けられず、 セブン-イレブンでも毎年100〜150程度の店舗閉鎖は発生している。加えて、出店当初は立地環境が良く、成功したとしても、その環境がずっと続くとは限らないのだ。

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