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» 2019年11月08日 05時00分 公開

小売・流通アナリストの視点:「セブン1000店舗閉鎖・移転」の真の意味 “加盟店の一揆”は何をもたらすか (3/4)

[中井彰人,ITmedia]

スクラップ&ビルドは生き残りの条件

 それまでは商圏内にライバルがなく、儲(もう)かっていたとしても、偶然に近くに空き地ができて、ライバルが進出してくれば、売上は分散する。それまでは周辺住民の移動動線上にあって人通りが多かった店舗でも、近くにバイパスができて移動動線が大きく変化すれば、売上は下がってしまう。このように人の動線や競合の変化によって、店舗の立地環境は変わってしまうのだが、これは店舗や企業の落ち度によるものではない。外部環境の変化に対しては甘んじて受け止め、自らが対応するしかない。それが、移転という選択につながる。

 チェーンストアでは、こうした企業行動は既に定石として確立されたものであり、スクラップ&ビルド(環境の悪化した店をスクラップして、より良い場所に店をビルドする、という意味)と呼ばれる大原則で、これを容赦なく進めることが生き残りの条件になることは過去の歴史が証明している。

 かつて、ダイエー、イオン、イトーヨーカドーの1997年時点の全ての店舗が、2014年時点でどのくらい存続しているかを調べて、時代遅れの店(=存続していない店)を残していたことが、三大流通グループのその後の運命にどう影響したかを検証してみたことがある(Mizuho Industry Focus 2014年7月2日 Vol.157 50年に一度の大転換期を迎えるスーパーマーケット業界)。

 その時の結論は、寂れ始めた地方の駅前に大量の古い店舗を残していたダイエーは、バブル崩壊後の消費低迷に一気に不採算店の山となり、事業継続できなかった。既に、スクラップ&ビルドを継続的に実施し、郊外のロードサイドに軸足を移していたイオンは、現在の地方郊外における覇者の地位を手にする。イトーヨーカドーは、大都市圏内店舗が多く、地方駅前の衰退による影響が限定的だったため、幸運にも生き残った、といった感じだ(コンビニを中心とした流通グループに転換したともいえる)。

 スクラップは、チェーンストアにとって痛みを伴うため、先送りしがちだが、そこに別の大きな環境変化(かつては、モータリゼーションによる立地環境変化や、バブル崩壊、今なら人口減少、高齢化からくる人手不足)が起こると、先送った問題が一気に爆発する。こうした事実は、現在の大手流通企業にとっては常識化しているため、スクラップ&ビルドの先送りといった状況は少なくなってきている(中堅以下の企業ではまだ散見されるが……)。 

 コンビニ大手においても、こうした意識は高いのであるが、この業界の構造上、やりにくい面は否めない。それは、コンビニがフランチャイズの加盟店との共同体を構成しているからだ。

 最近、さまざまな問題点が指摘されているコンビニ加盟店と本部の関係だが、大前提として、別の事業体同士である本部と加盟店の利益は必ずしも常に一致している訳ではない。。本部の判断で出店した店舗を請け負った加盟店は、見込み違いで売上不振だから閉店する、と一方的に言われても納得しかねるのは当然だ。

 方や、本部としても一定のハズレや環境変化による不採算店は、早急にスクラップ&ビルドするのは大原則であるため、加盟店との協議と協調が必要だ。ましてや、過去の成功体験が通用しないような労務環境の変化が顕在化してきた今、加盟店、本部ともにこれまでの延長線上の関係を続けることができないのは、既に関係者も分かっていることだろう。

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