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» 2019年11月26日 06時00分 公開

新社会人の8割がぶち当たる「入社後ギャップ」、防ぐための3ポイントとは学生も企業側にも深刻な悩み(5/5 ページ)

[小林祐児,パーソル総合研究所]
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就活時の「差別化アピール」に落とし穴

photo インターンでの経験と入社前理解(パーソル総研とCAMPの共同調査データより)

 分析を行うと、「目的・目標を設定して」インターンに参加し、積極的に「社員とのつながり」を得ることで、入社前の会社・適性理解が促進されていました。社員を通じて、「企業・職場の雰囲気を直接知る」ことが大切であり、そのためには「取りあえず会場にいる」スタンスではかなえられません。

 現状では、インターンの「目標設定」を行えているのは学生の59%、「社員との継続的人脈構築」ができている学生は31.4%にとどまっています。企業側も、人事担当者だけでなく、現場社員とのふれあい・交流の機会を多くもたせることで、リアリティ・ショックを事前に防止することができます。

 企業の採用活動は、学校の試験のように、はっきりとした正解があるではありません。フィギュアスケートのような得点化もされません。しかし、多くの学生は、「グループ・ディスカッションでどう振る舞えばアピールできるか」「エントリー・シートには何を書けばいいか」という試験と同じような「対策」で差別化しようとしています。しかし、データを見ると、そうした意識は、裏目にでているようです。

 具体的には、「就活で、他の学生との違いを積極的にアピールしたい」という意識が強い学生は、入社前の理解が進まないまま、入社してしまっている傾向にありました。「人と差をつける=他者との差別化」意識を軸にすると、自ら失敗に近づいてしまうということです。

 差別化アピールがなぜいけないのでしょうか。それは、最初に述べた、「内定獲得」が自己目的化してしまうからでしょう。これまで述べた通り、必要なのは、その企業をよく知ることであり、そのための行動です。自分の優秀さをうまくアピールできれば、内定はとれるかもしれませんが、それは「内定獲得」という目的しか達成できていません。

 その就活のゴールを覆してしまう入社後のリアリティ・ショックを防ぐ、そのために今何ができるかを考えたとき、「差別化」思考はその助けにならなさそうです。

企業側はどう対策すべきか

 これまで、就活におけるリアリティ・ショックの防止策を中心に述べてきました。では、企業サイドからみれば、どのように防止できるでしょうか。

 1つには、現場社員を巻き込みつつ、職場のリアルを伝えることです。今の学生は、企業がだす表向きのオフィシャルな情報には極めて懐疑的です。表層的なアピールでは学生の心をつかめない時代になっています。

 むしろ学生側は、その懐疑心があるために、たまたま入手し得た「裏情報」「真実に見える情報」に飛びついています。しかし、その多くは、「OB」や「先輩」が伝える限られた情報です。そんなゆがんだ情報で「真の姿」を見極められた気になられるよりは、会社側からリアリティを伝える工夫を凝らすべきでしょう。

 例えば、上述したインターンを行うにあたっても、現場社員を巻き込んで、積極的に学生とコミュニケーションをとってもらうことはやはり効果がありそうです。そのためには会社全体での「採用」意識の醸成、事業部の積極的な巻き込みなど、必要な工夫は多くあります。最近では、企業ブランディングの強化の一環で、社内広報をあえて外に出すことで、毎日のようにネット上で職場の様子を伝える企業もあります。

 もう1つは、分業化している「採用」と「教育(定着)」機能を接続することです。採用した人材が入社後にどのくらいの割合で辞め、どのくらいのパフォーマンスを出しているのか、採用部門が定量的に追っている企業は極めて少数です。採用面接時の評価とパフォーマンスがどうひも付いているかを見ず、見ていても採用担当者は責任を負わないのが常です。

 リアリティ・ショックという「不都合な真実」の結果責任を、企業の中の誰も負っていない状況が多く見られます。こうした機能不全の状態を解消し、「横串」で手を尽くせる体制をまずは整えるべきでしょう。

 リアリティ・ショックは、企業と学生双方が差し出す情報がゆがんでいることによる、「ギャップ」の問題です。眼の前の目的に双方が向けている労力が、少しでもこの問題に割り振られることを願っています。

パーソル総合研究所×CAMP 「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」 調査概要

調査手法:個人に対するインターネット調査

調査対象:居住地域:全国 18歳以上30歳未満の大学生・初職入社1-3年の社会人(離職者含む)

合計サンプル数 1700人

調査時期:2019年2月


著者プロフィール

小林祐児(こばやし ゆうじ)

パーソル総合研究所 主任研究員

NHK 放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームにて、各種の定量調査・定性調査・訪問調査・オンラインコミュニティ調査など、多岐にわたる調査PJTの企画-実査を経験。2015年入社。専門は理論社会学・社会調査論・人的資源管理論。


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