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低賃金が問題視されるアパレル業界 MBが見通す“分業化時代”に生き残るための働き方MBが語るアパレルビジネスの近未来【中編】(2/2 ページ)

» 2019年11月23日 12時00分 公開
[河嶌太郎ITmedia]
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販売員も分業化が進む

――メーカーの垣根を越えた「販売員」として、インフルエンサーになっているわけですね。服や接客が好きで業界にいる人や、これからMBさんのようになることを目指す人たちは、何を心掛けるべきなのでしょうか。

 これって「家」と同じだと思うんですよ。昔は家を建てるときって、大工さんがかなりの割合を1人でやっていました。でも今は、ガス屋さんや水道屋さん、左官屋さんなどが入ってきて、少しずつ分業化しています。

 Webサイトも昔はWebデザイナーが1人で全部やっていたんですけど、デザインだけやる人や、マーケティングだけをやるマーケター、コーディングするコーダーといったように、分業化が進んでいます。ビジネス全般にいえることですが、そのジャンルが発展すればするほど、分業化が進むと思うんですよね。

 そう考えると洋服屋さんも同じで、販売員っていう職業も少しずつ分業化が始まっていて、それが「インフルエンサー」だと思うんです。紹介すること、接客することそのものに価値を感じていて、そのものにお金を払うというお客さんや文化が少しずつ出てきています。だから活躍できる人は本当にすぐに外に出て、インフルエンサーのような立ち位置になっていくケースもあると思っています。

――近年では分業化だけでなく、副業化も進んでいます。アパレルの店舗で働きながら、インフルエンサーとして活路を見いだす働き方も今後は増えるのでしょうか。

 実際に増えてきていると思います。僕のように、販売員をやりながらインスタもやって、フォロワー数が増えてきて、自分で試しに洋服を作ってみたらちょっと売れて、気付けばその副収入だけで月30万円ぐらい稼げるようになってきて、仕事を辞めてフリーランスの販売員になる……そんな働き方もあると思います。

 僕以外にも服飾関係で頑張っている販売員さんやインフルエンサーさんは結構出てきています。この流れが進むと、消費者はあらかじめインフルエンサーなどのアドバイスを参考にしながら、事前に買う物を決めて店舗に足を運ぶようになります。そうなってくると、店ごとに販売員を雇うっていうこと自体が前時代的になってくるのかなとは思いますね。

――新刊では「好きなことを仕事にする」ことについても書いていますね。

 いまの世の中には閉塞感があると思うんです。東京で働いていても、生き生きと働いている人って意外とそんなに出会えない感じがします。いくら頑張っても報われなくて、このままこの先10年この仕事を続けるのかなとか、陰鬱(いんうつ)とした状況で仕事をしている人ってすごく多いと思うんですよ。

 僕は「みんな不幸に働く必要なんか全然ないよっ」て思っていて、ちょっとだけ幸せにしてみようという意思で『もっと幸せに働こう 持たざる者に贈る新しい仕事術』を書きました。そのためのヒントがいっぱい載っています。なるべく角が立たないように書いたつもりなので、穏やかな気持ちで参考にしてもらえるとうれしいです。

 少しでもみんなの閉塞感というものが払拭(ふっしょく)できればと思っています。現状にあまり満足してない方や、人生にちょっと行き詰まっていると思う人に読んでもらえると、何か発見があるんじゃないかなと思います。

(本日、夜公開予定の後編に続く)

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phot 集英社のWebサイト「よみタイ」では、書籍『もっと幸せに働こう 持たざる者に贈る新しい仕事術』の特設サイトが設けられている

著者プロフィール

河嶌太郎(かわしま たろう)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。アニメコンテンツなどを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「週刊朝日」「AERA dot.」「DANRO」「Yahoo!ニュース個人」など雑誌・ウェブで執筆。ふるさと納税、アニメ、ゲーム、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。共著に『コンテンツツーリズム研究〔増補改訂版〕 アニメ・マンガ・ゲームと観光・文化・社会』(福村出版)など。


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