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大戸屋の赤字転落、原因は「安すぎるから」?専門家のイロメガネ(5/7 ページ)

» 2019年12月11日 09時45分 公開
[中嶋よしふみITmedia]

飲食店のビジネスモデルは「客単価と回転率」

 飲食店は経営が難しく潰れやすいといわれる。理由の1つは売り上げに上限があるからだ。

 座席数に限りがあるため、受け入れ可能な客数には限界がある。その客数に単価を掛け合わせると一日の売り上げの上限が決まってしまう。これをシンプルに表すと以下のような計算式になる。

「客単価 × 客数 = 売上高」

 もう少し詳しく表すと以下のようになる。

「客単価 × 座席数 × 回転率 = 売上高」

 客数は「座席数×回転率」に分解可能だ。限られた座席数で売り上げを増やすには、客単価か回転率を上げるしか方法がないことが分かる。そしてすでに説明した通り、大戸屋は客単価と回転率の両面で不利な条件で戦っている。

 上記の計算式を会計視点で考えて、損益分岐点を表す公式に直すと以下のようになる。

「座席数 × 回転率 ×( 客単価 - 変動費 )= 固定費」

 客単価を客単価 - 変動費に、売上高を固定費に変えた。変動費は主に材料費、固定費は主に家賃と人件費と考えられる。

 客単価から変動費を差し引くと、粗利(あらり)となる。そして粗利に客数(座席数 × 回転率)を掛け合わせて、固定費とイコールになる売り上げが損益分岐点、つまり赤字でも黒字でもないトントンの売り上げだ。この計算式から、黒字を出しやすくする=損益分岐点を下げるには、固定費を減らすか粗利率を上げるかどちらかが必要だと分かる。

 低価格がウリの飲食店では一人当たりの粗利は少なくても、回転率を上げることで粗利を確保できる。これは牛丼チェーンでも「俺のフレンチ」でも同様だ。そして「固定費を粗利で削り取った後に黒字が発生」する。これがビジネスの鉄則となる。

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