#SHIFT

「責任と権限の委譲」問題、どのようにすれば解決するのかケースで学ぶ(2/5 ページ)

» 2019年12月20日 08時00分 公開
[ITmedia]

変革前の藤堂システムズ

 8年前に大手アパレルメーカー向けCXプラットフォームサービスをスピンアウトする形で創業した藤堂システムズ(仮名)。アパレル業界はEC化が遅れており、今後の伸びが期待される分野であったことに加え、元々大手アパレルメーカーと取引を持った状態でスタートしたため業績は順調に推移し、売り上げ30億円、社員数約40名の規模に成長した。IPOも視野に入れていたが、競合も増えてきておりサービスが乱立、CX(顧客体験)プラットフォームだけでは新規顧客の獲得が難しい状況にもなってきていた。

 そこで、新たに顧客接点の全てを一元管理できるサービスを開発し、アパレル業界以外への展開も視野に入れさらなる拡大を目指すことにした。新サービスは競合も多くスピーディな拡販と機能拡大が必要とされ、既存サービスとは動き方が変わるため、事業部制を導入しサービスごとに戦略を立てられる体制をとった。それに伴い、経営企画室長だった遠藤(仮名)を新サービス事業部の部長にし、既存事業部には外部から新たに部長を採用した。

 しかし、新たな体制は順調には進まなかった。新規事業部門を任された遠藤は、社長に対して不満を抱えていた。社長は「リーダーシップを発揮してほしい」というが、経営企画会議でたびたび事業プランを提案しても、毎回社長に否定され戦略が定まらない。そんな状況に遠藤は「事業部長という大きな責任を負わせられる一方で、十分な権限が与えられていない」と感じていたのだ。

 加えて元部下からは、「新しく来た部長は優秀なのは分かるが、前職ではこうだった、これが正しいという持論を振りかざしてばかりで、現場は結構不満を募らせえている」と聞かされ、「遠藤さんにうまく取り持ってほしい」と相談されていた。

 事業の方向性が決まらないことで、明確な目標設定ができないまま走っている中、既存のやり方を否定する新部長への批判の声も相まって、新体制に批判的な社員も目立つようになってきた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.