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イチゴが近づいてくる! 農業を救うかもしれない「自動化」の現場を探る効率化、新規参入につながるか(4/5 ページ)

» 2020年01月29日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

未経験の実業家がトマト栽培に挑戦

 作物の栽培に自動化技術を取り入れて効率化を図ることは、新規就農者を増やすことにもつながる。農水省の調査によると、18年の新規就農者数は約5万5000人。09年には約6万6000人だったことから、徐々に減少していることが分かる。一方、49歳以下の新規就農者数は2万人前後の横ばいで推移しており、若い世代で農業に関心を持つ人は一定数いるようだ。

 佐賀で19年に新しくトマト栽培を始めたのが、道の駅「吉野麦米」を運営する大地(佐賀県吉野ヶ里町)の社長、中尾義之氏だ。高齢者施設やバッティングセンターの運営なども手掛ける実業家が農業に関心を持ったきっかけは、近隣で導入された「イチゴ移動栽培装置」。ヤンマーグリーンシステムの徳川氏に話を聞くと、勧められたのが、自動で給水できる装置を活用するトマト栽培だった。

 「農業は素人だが、トマトは価格の変動が少なく、食卓の定番の野菜。参入できるだろうと考えた」と中尾氏は振り返る。中玉トマトの「フルティカ」を中心に、初めてトマトを収穫した。トマトは自社で運営する道の駅で販売を始め、好評だという。さらに、トマトと同じ装置を使ってメロン栽培にも挑戦し、収穫できた小ぶりの実を従業員に振る舞った。

中尾氏がビニールハウスで栽培するトマト

 中尾氏のビニールハウスでは「自然給水栽培装置(NSP)」という新しい製品を導入している。この装置では、トマトの苗の下に雨どいのようなトレイを設置し、その中に液肥を流している。液肥に浸した布から毛管現象によって、トマトが根を張る培地に水分が吸い上げられる。すると、トマトの蒸散が起きたとき、自然に培地から水分を取り入れることができる。

 「従来のように上から水をかける方法では、どのくらい水を必要としているのか分からない。この装置では、植物が水を欲している分だけ給水できる」と兼崎氏は説明する。必要な水の量は、光の当たり方や気温、成長ステージなどによって変わるが、それを考慮しなくても自然と過不足のない水やりをすることが可能だ。また、給水量のデータを見て生育状況を把握することもできる。

トマトの苗の下に液肥を流し、蒸散に応じて自然に給水できる

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