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コンビニが「命を削る現場」に 25年前に指摘された“やりがい搾取”の危険性河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/5 ページ)

» 2020年02月14日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

25年前に議論された「コンビニ問題」

 さかのぼること25年前の1994年。セブン-イレブン・ジャパンの経常利益が親会社のイトーヨーカ堂を抜き小売業トップになり、これは小売業界の“地殻変動”と呼ばれました。

 当時の日本社会では働く女性が増え、DINKS(子どもを持たない共働き夫婦)と呼ばれる世帯が登場。その結果、食料から生活用品、公共料金の支払いまでできる「年中無休」は、時代のニーズに合った、極めて魅力的な営業形態でした。が、その一方で、コンビ二の店長(オーナー)は、“ニューハードワーカー”と呼ばれていました。

 そこで、労働省(現・厚生労働省)は、コンビ二店長の“働き方”の実態を捉えるために、1993〜94年、「オーナー店長」と「雇用店長」を対象に調査を実施。その内容は「コンビニエンス・ストアの経営と労働に関する調査研究」というタイトルで、問題点と共にまとめられています(以下、内容を抜粋し要約)。

コンビニ店長の働き方の調査は25年前にも行われていた(写真提供:ゲッティイメージズ)

【労働時間】

  • 店長の週平均勤務時間は、65.1時間。オーナー店長が67.1時間、雇用店長が62.2時間で、オーナー店長の方が長い
  • オーナー店長では「休日なし」が、34.5%と最も多く、雇用店長は「週1日」が53.3%と、過半数を占めた
  • 「週休2日」は店長全体のわずか6.6%。「月1日」は13.1%

 以上から、仮に週に1日は完全に休み、6日間労働としても、1日当たり10.9時間労働となることが明らかになった。

【職務満足感】

 仕事全体、収入、能力発揮、裁量性、勤務時間、休日数の6項目の満足感を尋ねた。

  • 「仕事全体」は、半数以上が「満足」とした
  • 「能力発揮」「裁量性」で、特に満足度が高く、約6割の人が「満足」と回答
  • 「休日数」では、8割近くが不満と回答
  • 「収入」では、6割弱が「不満」
  • 「一日の勤務時間」は、6割強が「不満」
  • ほとんどの項目で、雇用店長の満足感の方がオーナー店長より若干高い傾向にあった

 以上から、収入や休日などの労働条件に関しては不満があるものの、能力発揮と判断の裁量度という点で、店長たちが満足していることは強調されてよい。

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