今年も確定申告の時期が到来しました。税金の仕組みは複雑で、「どっちが正解?」と迷うことが少なくありません。1つ判断を間違えて、税金が高くなってしまうこともあります。
近刊『確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える! 』(河出書房新社)では、こうした確定申告にまつわる迷いやすいポイントを50テーマ取り上げて解説しました。今回から、本書の一部について3回にわたって簡単に紹介していきます。
最初に取り上げるテーマは「領収書」と「レシート」について。フリーランスや個人事業主の多くが迷う、「必要経費」の問題を、証拠書類の観点から解説します。
フリーランスになって2020年で3年になりますが、時々不思議に感じることがあります。周りのフリーランスの方々が、「やたらと領収書を要求している」ということ。レシートが出るお店でも手書きの領収書を書いてもらっています。
そういうとき、私は「レシートでいいのでは?」と思うのですが、話を聞くと、どうも領収書のほうが税務署から必要経費として認められやすいイメージがあるようです。ただ、東京国税局に13年間勤めた経験から、領収書よりもレシートのほうがいいと思っています。その理由について、順を追って説明しましょう。
その前に、税務上の必要経費について簡単に説明しておきたいと思います。税法のルールによると、必要経費は次の通り規定されています。
(1) 売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2) その年の生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
難しい言い回しですが、簡単に表現すると、「売上を得るために必要な費用」や「業務上必要な費用」ということです。商品の仕入代や広告宣伝費、消耗品費などが考えられるでしょう。
必要経費として認められるかどうかは、事業の内容によっても変わってきます。私はライターなので、あまり必要経費がかかる仕事ではありませんが、取材のときの交通費や、普段使っているPCの購入費、コワーキングスペースの利用料などを必要経費として計上しています。
事業にまったく関係のない費用は、たとえ支払っていたとしても必要経費として認められません。例えば仕事に関係しない知人との飲み代や、プライベートで使うモノの購入費などを必要経費として確定申告をすると、後から税務調査で指摘されてしまうかもしれません。
必要経費に着目した税務調査がなされることはよくあり、税務職員は「この費用は事業と関係ないのでは?」「プライベートに使っているのでは?」といった視点から調査を進めます。このときに、必要経費になるかNGかを判断する最大の材料が、レシート、もしくは領収書ということになります。
したがって、「レシートだからダメ」「領収書だからダメ」というルールはそもそもありません。大切なのは、それらの書面に記載されている情報。その支払いが、いつ、誰に対して、どういった目的で行われたものかといった点にあります。「領収書なら税務署に認められる」というのは、単なる都市伝説にすぎないのです。
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