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» 2020年03月11日 08時00分 公開

リテール業界を疲弊させる46兆円の無駄をAIで解消――サントリーや日本ハムも参画 (1/4)

「AIによる棚割」が人間を超える日は来るのか。

[酒井真弓,ITmedia]

 140兆円規模を誇る日本の小売・流通市場。その約3割にあたる46兆円のコストがいまだ最適化されておらず、業界全体を疲弊させる原因になっているという。食品廃棄ロスは、デイリー食品(毎日店舗に配送される食品)カテゴリーだけでも500億円に上る。

 売り場を支える物流に至っては、労基問題や過積載により行政処分を受ける企業も少なくない。小売・流通を取り巻く課題は、一企業の力では解消しがたい社会問題となっている。

6社が提携して新たな買い物体験の提供を目指すリテールAIプラットフォームプロジェクト「REAIL(リアイル)」

 九州を中心にスマートストアを展開するトライアルカンパニーは、2月25日、業界を蝕むこれらの課題解決と、新たな買い物体験の提供を目指すリテールAIプラットフォームプロジェクト「REAIL(以下、リアイル)」について会見した。店舗とリテールAI技術を有するトライアル、メーカーのサントリー酒類と日本ハム、卸の日本アクセス、物流のムロオ、冷凍冷蔵ショーケースのフクシマガリレイの6社が連携し、AI活用によって46兆円の「ムダ・ムリ・ムラ」の解消に挑む。

 トライアルグループ Retail AI 代表取締役社長 永田洋幸氏は、4月24日にリニューアルオープンするトライアル長沼店(千葉県千葉市)などを舞台に、「PoCレベルではなく、実際のオペレーションを変え、数値実績を出したい」とした。まずは長沼店で確かな実績を作り、リテールAI導入店舗や参画企業を増やしていく予定だ。

異業種が連携し、共存共栄のプラットフォームとなる日

 今回の会見では、たびたび「他社を巻き込んでプラットフォーム化する」という表現がなされた。プラットフォームと聞くと、今ならGAFAのようにインターネット上で大規模なサービスを提供する巨大な一企業(プラットフォーマー)を思い浮かべるかもしれない。しかし、今回の「リテールAIプラットフォーム」は、小売・流通業界のエコシステムを形成していた企業が連携を強化し、それぞれが持つ資産や強みを共有し合いながら共存共栄を目指すモデルだ。

 企業が連携してプラットフォームを目指す例は他にもある。2015年には、味の素、カゴメ、ハウス食品といったライバル企業が共同で食品物流プラットフォームを構築し、19年には全国規模の物流会社設立に至った。

 北海道では、サツドラとコープさっぽろが提携し、21年までに食品はコープさっぽろ、日用品などはサツドラに調達を集約し、コープさっぽろの物流網を通じて双方の店舗に商品を供給するとしている。

 競争と協調を線引きし、組めるところは積極的に組んでいくことによって一企業では太刀打ちできない大きな課題解決に取り組んでいる。そうやって少しずつボトルネックを解消した結果が、日常の心地よい買い物につながっていく。

AIを導入しただけでは、産業は変えられない

トライアルグループ Retail AI 代表取締役社長 永田洋幸氏

 もう1つ強調されたのは、AIを活用しながらも「テクノロジードリブンではない」という点だ。シリコンバレーで起業経験もあるRetail AI 永田氏は、「シリコンバレーでは、テクノロジーを優先して消えていった企業がたくさんある」とし、現場のオペレーションに寄り添ったアプローチが重要であることを示した。だからこそ、店舗、メーカー、卸、物流、ファシリティ、それぞれの立場で店舗運営の課題に当事者として取り組み続けてきた6社が組むことに意義がある。

 さらに永田氏は、10年以上前から交流がある『キャズム』の著者ジェフリー・ムーア氏の言葉を紹介した。

 「AIでオペレーションを変えるだけでは産業は変わらない。顧客が変わると産業が変わる、顧客の行動が変わることにこそインパクトがある」

 永田氏は、AI、ビッグデータの活用によって消費者と商品のマッチング精度を高め、より良い買い物体験を提供することが、顧客の行動を変え、ひいては小売・流通の課題を本質的に改善していくサイクルを生み出すと考えている。

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