こうしたマネジャーによる厳格な管理は「マイクロマネジメント」と称される。小林さんによると、近年の企業での働き方改革やダイバーシティーの方針がこの管理傾向を強めているという。「『残業を〇時間以内にする』など、上司も部下をルールで縛るようになる。(ダイバーシティー尊重で)いろんな属性の人が職場に増えると、管理職は皆の意見を募るよりも、『うちはこうだから』とやはりルールを持ち出す方が管理は楽だからだ」。
結果、管理職がこうした時代の変化に対応しようとしてマイクロマネジメントを強めるほど、部下は受動的もしくは批判的に行動するようになり、上司の負担が増す“自業自得のループ”に陥ってしまう、というのだ。
多くの企業を調査してきた小林さんが、この“ループ”によって引き起こされている問題の1つとして挙げるのが、「管理職志向の低下」。特に優秀な女性が管理職になりたがらない傾向にあるという。
「会社がマネジメント業務を任せたいと思う女性社員がいたとしても、晩婚化が進む今、特に(管理職になりやすい年代の)30代くらいの女性は育児や家事といった負担もある。彼女らはこういう(負担が増すループの)状況を見て、「私に管理職はできない」と二の足を踏んでしまう」(小林さん)。結果として、能力で劣る男性社員を管理職に就けざるを得ないケースも多いという。管理職向きでない人がマネジメント業務に就くことで、このループがさらに強化されてしまうというのだ。
では、日本の職場はどうすればこのマネジメントの“負のスパイラル”から抜け出せるのか。小林さんは「管理職問題は昔の比ではなく、構造的で難しい」としつつ、「まずはこのループを断ち切るしかない」とみる。
まず、「人事が働き方改革に伴う管理職の負担増を、ちゃんと直視すること」。その上で、管理職の役割のうち不必要な物については廃止したり、分担することが有効という。
近年はダイバーシティー重視のため、管理職より年上のベテラン社員が職場にいることも多い。彼らに部下のメンター(指導・助言)の役割を頼む、といった具体策を小林さんは提示する。
さらに重要なのは「権限移譲」だ。「面倒で不必要な社内調整を減らすため、部下に『これは上申せず君が決めていいよ』と言ってあげること。マイクロマネジメントでなく『任せて認める』管理ができないと、上司側も苦労する」(小林さん)。
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