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仕事のテレワーク化、「コロナで嫌々」でなく「当たり前」に変える秘訣危機をチャンスに(4/4 ページ)

» 2020年05月08日 08時00分 公開
[砂川和泉パーソル総合研究所]
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企業の競争優位の源泉に

 HRテクノロジーは働き方改革の要でもある。業務の効率化や標準化が進み、時間や場所にとらわれない働きやすい環境が実現されれば、多様な社員の活躍やエンゲージメント向上が見込めるとともに、生産性の向上につながる。さらに、浮いた時間でより付加価値の高い仕事に集中することや、最適化や高度化の実現によってより精度の高い意思決定が可能になり、競争優位の源泉となる。

 例えば、前述のデジタル面接であれば、時間や場所の制約からの解放による時短社員の活躍という「働きやすさ」の観点や時間の短縮化という効率化の側面に加えて、地理的・時間的に多様なバックグラウンドをもつ人にアクセスすることができ、採用母集団の裾野が広がる。また、選考にあたって複数の面接官による多角的な評価をおこなうことで評価基準のバラつきを阻止できること(=最適化)もメリットである。なかには、AIを使って活躍人材の予測をおこなうことができるようなツールもある(=高度化)。

 人材育成もテクノロジーの力で進化させることができる。"いつでも、どこでも"受講可能なeラーニング/マイクロラーニングでは時間や場所の制約からの解放につながることはもちろん、個々人が自身に適したコンテンツを受講することもできる(=最適化)。また、オンライン集合研修では、その場でWebアンケートの回答を集計・共有したり、リアルタイムで双方向フィードバックが可能になるような仕組みを使えば、これまで手を挙げて発言しづらかった人の意見も吸い上げて共有することができるメリットもある(=高度化)。

「データの一元管理」できるか

 最後に1つ、システム選定にあたって考慮すべきポイントを付記したい。いまは緊急事態として導入を急がざるを得ない側面もあるが、中長期的視点で考えると、"データの一元管理"を念頭に置いた選定が必要である。

 近年ピープルアナリティクスと呼ばれる人事・人材マネジメント分野のデータ分析に基づいた科学的意思決定への関心が高まっているが、せっかくシステムを導入してデータがたまってもデータが散在しているのでは後に分析を実施しようとしたときに大きな壁となる。三菱UFJリサーチ&コンサルティングがおこなった調査によると、人事業務におけるデータ活用を実施していない企業の6割以上が「データの一元管理」を導入障壁と回答しており、データがバラバラであることが分析にあたっての大きな障壁となっている。セキュリティの観点や自社の規模・特性にあったものを選択することは勿論(もちろん)であるが、将来の分析を念頭に、既存システムとの連携や拡張性を考慮したもの、また統合的なシステムを検討することも1案であろう。

 国難とも呼べる現況において、明暗を分ける1つのカギはテクノロジーの活用にある。

 働き方改革の流れとあいまって、HRテクノロジー導入は時代の要請とも言える。ピンチをチャンスにすべく、テクノロジーの力で不可能を可能にし、抜本的に「働き方」を見直すこと、そして、生産性を向上させ、より精度の高い意思決定に舵を切っていくことが、目下の事業継続とその先の明るい未来につながる。

著者プロフィール

砂川 和泉(すながわ いずみ)

パーソル総合研究所研究員。大手市場調査会社にて10年以上にわたり調査・分析業務に従事。定量・定性調査や顧客企業のID付きPOSデータ分析を担当した他、自社内の社員意識調査と社員データの統合分析や働き方改革プロジェクトにも参画。2018年より現職。現在の主な調査・研究領域は、ピープルアナリティクス、HRテクノロジー、ワーキングマザーの就労、キャリアなど。


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