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“コロナ後”に焼き肉店が過去最高の売り上げ 中国で奮闘した日本人社長、汗と涙の全記録アフターコロナ 仕事はこう変わる(3/7 ページ)

» 2020年05月22日 05時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]

危機的状況なのに社内勉強会

 2月いっぱいでの倒産も考えていた福庭社長でした。しかし、外国人である自分を信じて今までついてきてくれたスタッフ達を路頭に迷わせるわけにはいかないと考え、会社存続に向けて「やれる所までやる!」という決意を固めます。

 こうした中で福庭社長は大きなコストであった本社スタッフ部門の解体を決意します。そして、本社スタッフ一人一人に対して、一緒にお店のデリバリースタッフとして働いてもらうようにお願いをしました。さらに「全員経営」をスローガンに掲げ、今まで外部の税理士さんにお願いしていた経理業務等も、社内でプロジェクトを立ち上げ内製化していきました。当初は、こうした不慣れな業務をさせることでスタッフの不満が続出すると懸念していたのですが、実際はその逆でした。会社が危機的な状況であることは全てのスタッフが知っていました。しかも、大変な状況にあるのは自分達の会社に限ったことではありません。日本よりもさらに厳しい都市封鎖で、ほぼ全ての企業が厳しい経営危機に陥っていました。

 福庭社長が「全員経営で必ずこの窮地を乗り切る」という方針を明確に示したことで、スタッフ一人一人にも「この大変な状況を皆で乗り越えるしかない」という、ある種の覚悟のようなものが芽生えていったそうです。

コロナ禍に襲われる前に実施していたスタッフ表彰式

 そんな中、2月中旬に福庭社長から筆者に連絡がありました。「社内勉強会をしたいので、三ツ井さんの会社で持っている飲食店スタッフ向けの教育カリキュラムを提供してくれないか」というご相談でした。もちろん快諾しましたが、当時の筆者は「こんな大変な状況で社内勉強会をして効果があるのですか?」という率直な感想もお伝えしました。

 しかし、福庭社長は「こうした時期だからこそ勉強会をやりたい。新型コロナウイルスの発生前は“何となく”働いていたスタッフの意識も、今回の社会的な危機を受けて“自分自身の能力をもっと高めていかなければならない”というふうに変わりました。たとえ私の会社がダメになったとしても、次の会社で頑張れるようにスタッフの能力を高める教育をしていきたい」とのことでした。

 こうして福庭社長は飲食店経営における「マーケティング講座」や「マネジメント講座」などさまざまな社内研修を立ち上げました。弊社の教育テキストはもちろん日本語ですが、福庭社長はそれを短期間で全て中国語に翻訳し、中国人スタッフにも分かりやすいようにテキスト内容を修正し、空いた時間で社内勉強会を実施していきました。

 さらに全店の料理長らを集め、今まで時間が無くてできていなかった店舗メニューの原価分析やメニューレシピ改善プロジェクト等も進めていきました。

 こうした福庭社長の「前に進むぞ!」という姿勢が、全てのスタッフの意識を変えていきました。

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