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“コロナ後”に焼き肉店が過去最高の売り上げ 中国で奮闘した日本人社長、汗と涙の全記録アフターコロナ 仕事はこう変わる(6/7 ページ)

» 2020年05月22日 05時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]

after&withコロナの飲食店がやるべき3つのこと

(1): お客さまのデータをしっかりと集める

 突然ですが皆さまは「火事とけんかは江戸の華」という言葉をご存じでしょうか? 江戸では2〜3年ごとに大火事が発生していたそうです。1回の火事で11万人以上の死者が出ることもありました。お店が全焼し、やっと立て直しても再度火事に襲われるケースも珍しくありませんでした。そんな状況ですから、「火事になったら、真っ先に顧客台帳を持って逃げる」というのが江戸の呉服屋の経営の鉄則となります。

 営業を再開した際には、顧客台帳に記されたお客さまの家を一軒ずつ訪問し、営業再開のあいさつをしていきます。そこでまた新しい着物を買ってもらっていたそうです。

 例え話が長くなりましたが、新型コロナウイルスは一度収束したように見えても、定期的に小規模な感染拡大を繰り返す可能性があります。再発する度に飲食店をや小売店は客数が減るだけでなく、営業自粛を余儀なくされる可能性があります。そんなときにお客さまにいち早くお店の状況を伝える手段として、顧客台帳が今まで以上に重要となることは間違いありません。

 ハガキやDMなどを送付する方法もありますが、これではコストがかかり過ぎます。今後重要になってくるのはメールアドレス、LINEやSNS等のアカウントの収集になります。私はこれらを総称して「デジタルアドレス」と呼んでいます。福庭社長のお店はオープン以来多くのお客さまのデジタルアドレスを収集してきました。そのおかげで、お店の感染防止対策や営業再開キャンペーン等の告知を迅速に行えました。そして、短期間のV字回復を実現できたのです。

 日本国内の弊社のご支援先企業様でも、お弁当の販売開始を今まで収集してきたデジタルアドレスを使って告知しただけで、通常営業と変わらない売り上げを獲得するケースもありました。

(2): 全員経営体制の構築

 効率的な経営を行うために「専門性」と「分業」という考え方は重要です。しかしながら、今回のような非常事態では、ムダなコストを排除した上で、足りない部分のリソースを担当以外の社内全員が補う「全員経営」が重要となります。全員経営にはスタッフの団結力を高める効果もあります。

(3): 経営者の前に進む姿勢

 私も会社を経営していますので、今回のような状況で経営者が前を向いて方針を打ち出すことがどれくらい大変なのかよく分かります。ただ、不安なのは経営者だけではありません。スタッフの皆さんも大きな不安を抱えています。そんな中で福庭社長は「例えうちの会社が倒産してしまったとしても、スタッフの能力が高まり、次のステージで活躍できる人材になれるように」という考えから、社内勉強会を立ち上げました。結果的にこれが全スタッフの仕事に対する意識を高めました。

 まだまだ先行き不透明な状況ではありますが、新型コロナウイルスによる倒産の危機を乗り越えた福庭社長は現在の心境を次のように語ります。

 「今回の新型コロナウイルスによって、2店舗の閉店を余儀なくされました。会社の資金繰りもまだまだ大変な状況ですが、スタッフ同士の結束は今までと比べて圧倒的に強くなりましたし、経営におけるさまざまな無駄も排除できました。結果的にこの危機によって会社が強くなったという確信があります。今回の件をバネにして、事業拡大に再度チャレンジしていきたいです」

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